くらし 【特集】チャ。ー霧島茶の躍進についてー(1)
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- 自治体名 : 鹿児島県霧島市
- 広報紙名 : 広報きりしま 2025年5月上旬号
鹿児島県の荒茶生産量が日本一になったことを知っていますか。
なぜ鹿児島県が日本一になれたのか、霧島茶の新たな魅力とともに紹介します。
■荒茶生産量と栽培面積の推移(鹿児島県・静岡県)
※茶業振興対策資料(令和6年度・鹿児島県)を基に作成。栽培面積は積み上げによる表示。
■緑茶消費量の推移(鹿児島市・静岡市・全国平均)
※総務省統計局家計調査(二人以上の世帯)品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキングを基に作成
今年2月中旬、報道機関各社が「鹿児島県産荒茶、初の首位」という記事を報じました。荒茶というのは、収穫した生葉に蒸すなど1次加工を施した物で、さらに工程を重ねると店頭で並ぶ茶葉になります。この荒茶の生産量は、統計が残る昭和34(1959)年以降、静岡県がトップを走り続けてきました。その静岡県を抜いて首位をつかみ取ったのが鹿児島県。なぜ日本一になれたのか、その理由を市茶業振興会会長の有村幸二さん(62)に尋ねました。
■霧島茶の成果と課題
「鹿児島県が荒茶生産量日本一になれたのは、静岡県が減少したからという声もありますが、鹿児島県は平地で栽培されることが多いため、先人たちの努力により機械化が進み、後継者も育っているという強みがあるからと言えます。中でも県内で唯一、栽培面積を増やしているのが霧島市です」と幸二さんは話します。「全国的に茶の栽培面積は右肩下がりです。市内の茶畑の総面積に当たる約700ヘクタールが毎年減っている状態。そんな中霧島市が増えているのは、機械化で効率が良くなったのはもちろんですが、いち早く有機栽培のお茶やてん茶に挑戦し、国内外の消費者ニーズに応えたいという生産者のやる気の表れだと思います」と続けます。
幸二さんは(株)有村製茶の3代目で、これまで日本一の称号である農林水産大臣賞を受賞するなど、品質の高い霧島茶を作り続けています。「静岡など先進地から学んだことを取り入れ、霧島市自体も品質日本一の産地賞を頂くまでになりました。そして今回の県としての生産量日本一という快挙。ですが、消費者が知っているのかという課題があります」と眉をひそめます。
総務省統計局が行っている家計調査に、緑茶の消費量のランキングがあります。昨年度の公表分では調査対象の鹿児島市が759グラムで18位、1位は静岡市で1344グラムと約2倍の量が消費されています。幸二さんは「飲んでもらうためには知名度を上げるしかない。お茶といえば鹿児島、霧島と言われるようにPRにも力を入れていきたいですね。ぜひ地元の皆さんにも霧島茶を飲んでもらっておいしさを広めてもらえたら」と力を込めます。
■新たな挑戦
「今は緑茶以外にも紅茶やウーロン茶、抹茶など多様なニーズがあり、それに応えるために栽培するお茶の種類も多くなっています」と話すのは、幸二さんとともに茶業に精を出す長男の幸凌(こうりょう)さん(29)です。幸凌さんは農業大学校でお茶を学び、静岡や市外などでも経験を積んできました。
これまでの学びを生かして新たなお茶作りに挑戦する幸凌さん。試行錯誤を繰り返し、ウーロン茶には適さないと思われた日本茶品種で「かなやみどり烏龍(ウーロン)」を生み出し、昨年11月、日本茶AWARD(アワード)2024で見事大賞に選ばれました。この大会の最終審査は一般消費者による試飲で、煎茶や有機栽培茶などさまざまな日本茶が横並びで審査されます。これまでの大賞はいわゆる緑茶で、ウーロン茶の受賞は初めて。「作ったものが認められてうれしいです。煎茶などでもエントリーしましたが最後に残ったのはまさかのウーロン茶。このお茶は想像するような茶色ではないので、ウーロン茶と思わずに飲んだ人もいたかもしれません。さまざまなお茶がある中でどれだけインパクトを残せるかが大事。嗜好(しこう)も変化してきているのだと思います」と幸凌さんは話します。
「大会に参加して驚くのは、お茶への関心を持つ人が大勢いること。千人以上の人が集まって、お茶を買うために行列を作ります。受賞した後には、わざわざお茶を買いに県外から来る人もいました。まだ大量生産はできないので、改良しながら誰も作ったことのないお茶作りを追求していきたい」