くらし 【特集】チャ。ー霧島茶の躍進についてー(2)

■海外からの需要が高まる有機栽培茶。
霧島市が全国有数の産地であることを知っていますか。
「有機○○」「オーガニック○○」という表示がされた食品を食べたことがありますか。これらは有機食品と言われる物で、農薬や化学肥料などの化学物質を使わずに生産された物です。日本では農林水産省が認証制度を設けており、基準を満たした物には「有機JASマーク」を付けることができ、前述した「有機」や「オーガニック」という言葉を表示できます。
環境に配慮した有機食品は、国内以上に海外からの需要が高まっており、お茶もしかり。実は有機JASの茶畑の面積のうち、国内の約半分が鹿児島県。中でも全国シェア12%の霧島市は先進地として、今なおその面積を増やし続けています。

▽世界に広がる有機栽培茶
国分郡田の山あいでお茶を育てているのが、霧島製茶(株)の林修太郎さん(41)と賢治さん(34)兄弟です。霧島製茶は明治時代に始まり140年余り続く老舗の茶園です。「有機栽培の認証制度が始まる前、1990年代初めに先代の父が農薬を使わないお茶作りを始めました。自身も体が強くなかったので、散布する農薬を浴びたくないというのもあったのだと思います」と修太郎さんは話します。「始めたばかりの頃は『なんねこん柳ん葉は』と市場でからかわれることもあったと聞きます。そりゃあ農薬や化学肥料を使った茶の方が育ちも良く色もきれいだったでしょう。それでも体に良い物を作りたいと手間をかけて作り続けた。それを今僕たちが受け継いでいます」と賢治さんも胸を張ります。
有機栽培茶を早くから始めた霧島製茶は、お茶の価格が低迷している国内ではなく、販路を海外へと独自展開していきます。「海外の方が健康や環境への意識が高まっているように感じます。初めは数十キロしか扱ってもらえなかったものが、今は9トンを超えるまでになりました。海外に出てみて思うのは、お茶の扱われ方の違い。日本だと年配者が自宅でというイメージってありませんか。海外は違う。お茶の専門店がたくさんあり、茶器にこだわり、お茶を入れる時間そのものを楽しんでいます」と賢治さんは話します。「ここ数年で国内でも有機栽培茶が認められ始めています。もっと畑を広げて、海外への輸出も増やしていきたい」と意気込む修太郎さんと賢治さんは、幼い頃から走り回った茶畑で今日も汗を流します。

▽お茶文化をつなぐ
「日常茶飯事という言葉があるくらい、お茶とご飯は一緒にあった。今は家で急須のお茶を飲む人が減り、日本人のお茶離れが進んでいます。家で飲まないならお店でお茶を飲んでもらい、おいしいと思えば家でも飲みたくなるのではと思ってカフェを開きました」と話すのは、溝辺町で茶業を営む傍ら、日本茶カフェTOKI KIRISHIMA(とき きりしま)を経営する今吉製茶(有)の今吉耕己(こうみ)さん(59)です。
カフェではお茶のおいしさを知ってもらおうと、飲み物として味わうだけでなく、スイーツや料理、全てのメニューにお茶を使用しています。カフェの店長・渡利涼子さん(53)は「身近になってきた抹茶を使ったスイーツの他にも、茶葉を丸ごと食べるお茶漬けや、茶葉をバジルのように使ったチャノベーゼなど工夫を凝らしています」とほほ笑みます。「水出しのお茶は甘みが強くなるなど、お茶は入れる水の温度一つで、いろんな顔を見せてくれます。全てのメニューにお茶を付けていて、手間をかけて入れたお茶を自分へのご褒美として楽しんでもらい、お茶のおいしさを再確認していただけたらうれしいですね」と続けます。
市内には、お茶の直売店やカフェが複数あります。皆さんが何げなく通っている道にも、生産者の顔が見えるお茶屋さんがあるかもしれません。今吉さんは「毎年、茶摘み体験などお茶に親しんでもらう企画も行っています。いろんな生産者のお茶を飲み比べたり、体験できるのは産地だからこそです。TOKI KIRISHIMAという店名も、霧島での時間を楽しんでもらいたいという思いから。ぜひ茶どころ霧島を知ってもらい、おいしいお茶を次世代の子どもたちへつないでもらいたい」と期待を込めます。
今吉さんは現在、日本を飛び越えて日本茶カフェTOKI MATCHA(とき まっちゃ)を開こうと動いています。「開店予定の現地の人も日本茶をおいしいと言ってくれます。まずは人気の抹茶を使った物から始め、いつか急須で入れるお茶文化自体も広めたい」

■海外でも認められ、広がり始めている霧島茶。皆さんも新茶が出回るこの季節に、ほっと一息、霧島で霧島茶を味わってみませんか。