- 発行日 :
- 自治体名 : 鹿児島県志布志市
- 広報紙名 : 市報しぶし 2025年7月号
■志布志市市制施行20周年記念 令和7年度志布志市自主文化事業
桜舞(さくらまい)~花征はなゆきて~
令和7年8月15日。戦後80回目の終戦の日を迎えます。さらなる平和を誓い、新たな一歩を踏み出した、翌日の8月16日。
市では、演激集団インディゴプランツによる公演「桜舞~花征きて~」を自主文化事業として実施します。今回は、出演俳優への独占取材を通して、公演への思いや期待を伝えます。
藤田信宏(秋山勇少尉役)
宮城県出身。
演激集団インディゴプランツ主宰。全作品の演出・補綴・殺陣を担当。
出演作品:
[映画]ラストサムライなど多数
[テレビ]NHK「正直不動産2」「大岡越前8」他
三原珠紀(山際響子役)
長崎県出身。
インディゴプランツ全作品に出演。
出演作品:
[映画]深作欣二監督作品東映「バトルロワイヤル」金井泉役 他
[テレビ]】NHK大河ドラマ「龍馬伝」「七瀬ふたたび」「ハゲタカ」他
▽物語について
[藤田]
鹿屋海軍航空基地で行われた桜花作戦を題材に物語が紡がれていきます。
桜花とは、大型爆弾に操縦席と翼、ロケットを付け、一式陸上攻撃機が敵艦船付近まで運び発射する特攻兵器のことです。
桜花搭乗員である秋山勇予備少尉は、未だ悩みの中にあり、生きること、死ぬことの意味を探していました。
しかし、彼はそこで出逢う従軍看護婦の山際響子をはじめとして、一式陸上攻撃機隊の近藤隊長や桜花整備兵である御代田啓太と語り合い、少しずつ生きる意味、死ぬ意味、真の自分の進む道に気付いていきます。
▽迫力ある公演の注目点
[藤田]
数多くあるので、なかなか選ぶのは難しいところではありますが、2つ選んでみます。
1つ目は、戦闘機が飛び立つ時の効果音です。
例えば零戦や一式陸攻が飛び立つ時に、舞台上から客席後方へと音が移動していきます。すると、本当に戦闘機が飛び立っていくように感じられるんです。
この臨場感あふれる点は、舞台だからこその要素ではないかと思います。
もう1つは、舞台美術の桜のセットです。作品が進んでいくことと並行して桜が少しずつ咲いていきます。また、桜が咲くという現象自体を、目に見えるかたちで演劇的に見せています。それがどのような意味を持つのかなども感じてもらえると嬉しいです。
▽作品制作にあたって
[藤田]
南九州市の知覧特攻平和会館や鹿屋市の鹿屋航空基地史料館には何度も何度も訪問させていただきました。その他、全国各地の平和祈念館なども訪問しています。
文献を調べるのは当然のことながら、当時の実物をじかに見ることができる場所へ赴き、そこで得る感覚は非常に貴重だと感じています。
当時の方々の抱いた思いを頭と心に叩き込み、誠実な心で作品に臨んでいます。
▽若者にこそ見てほしい舞台
[三原]
「桜舞」は鹿屋の地を背景にした作品です。でも、戦争はどこか1つの地域だけで起きているのではない。この舞台を見て、自分が暮らす地域にはどのような歴史があったのか、興味を持つきっかけになってくれたら良いと思っています。
もし8月15日に終戦を迎えていなかったら、この志布志の地で、志布志湾への上陸作戦が立てられていた。もし、そのような展開になっていたら…。なんてことのない当たり前の日常は無かったんです。
1つの事象だけを見るのではなく、多角的に物事を捉えられるように、私もなりたいです。
▽名物稽古 軍事訓練
[三原]
稽古期間中、芝居稽古の他に、毎日「軍事訓練」という時間があります。
軍人としての所作を行うには、体幹がとても大切です。その体幹をコントロールするための肉体も必要です。そ秋山少尉、父との別れのために「軍事訓練」を行っています。
「軍事訓練」の内容は、軍人の敬礼や行進、右向け右、回れ右などの所作稽古。それから、かけ声稽古。
そして、もう1つが肉体訓練です。これは、稽古と称した20分間の筋力トレーニングになります。
主宰(藤田)が考案したこの肉体訓練が本当に厳しくて(苦笑)
普段ある程度は鍛えている役者達ですが、この「軍事訓練」の時間が終わると軒並みヘトヘトになるんです。
次の稽古までの休憩時間を少しでも長く確保できるように、みんなで必死に食らいついて取り組んでいると…、ある日、平然と2セットこなせるようになっていまして。
休憩時間が増えて、みんなでワイワイと喜んでいるところに、主宰(藤田)のこんな声が響いたんです。
「みんな設定した時間に対して余裕をもってこなせるようになってきたから、今後は3セットに増やそう(軽やかな声)。」
笑顔で言ってのける主宰のこの一声に一同絶句です。あの時の空気は忘れられません(笑)
◆伝えたいメッセージ
[藤田]
今回の舞台「桜舞」は、現代の平和な世の中に対する感謝の気持ちや、命の大切さなどを感じていただける作品にしたいと思っています。
私たちインディゴプランツは「忘れてはいけないこと」をテーマに掲げ、作品をつくってきました。
「桜舞」を鑑賞いただき、観客一人一人がそれぞれに「忘れてはいけないこと」を見つけていただけると嬉しく思います。