- 発行日 :
- 自治体名 : 鹿児島県徳之島町
- 広報紙名 : 広報徳之島 令和7年6月号
■町長×教育長×校長
~子ども達との対談を終えて~
高岡秀規町長、福宏人教育長と、教育事業に携わった亀津中の政岡健作校長、花徳小の佐々木恵美校長(※当時)を迎え、お話を伺いました。
―教育事業に参加した子ども達との対談が終わりました。交流を通じてどのようなことを感じましたか?
高岡町長:まず、これらの事業は、都会の子ども達と島の子ども達を比べたとき、様々な体験について「やったことがない」「聞いたことがない」「感じたことがない」というような差がなくなるよう、様々な経験を積んでもらう、という趣旨でスタートしました。それはきっと、子ども達が大人になったときに、経験して感じたことが生きてくるだろうと思っていたんですが、子ども達の話を聞くと、もう既にそれぞれの成長として表れているな、と。僕が思っている以上に、子ども達に、いわゆる哲学的な生きる力がついていることに感心しました。
福教育長:子ども達の率直な意見が聞けて非常によかったです。それぞれの体験は、大変なこともたくさんあっただろうけれど、挑戦する気持ちや、そこで学んだことには非常に大きな価値があったように感じました。
―学校現場での取り組みはどういった様子でしたか?
政岡校長:亀津中学校の生徒は、インターンシップ教育事業や沖縄科学技術大学院大学(ОIST)の沖縄との連携事業に参加しましたが、これは、「キャリア教育の視点から学びをどう充実させるか」という亀津中のビジョンに合致する事業でした。
亀津中に赴任したとき、先生方がとてもやる気にあふれているのを感じたんですね。この機会に教育課程を見直していきたいと思い、「総合的な学習の時間」の内容について考えました。
これまで生徒は学習発表会で劇などをやっていましたが、そういったものではなくて、生徒が自分たちでしっかり課題意識を持って取り組んで、それを何とか解決できる方法がないか、学び考え、それを学習発表会で発表する。そういうことが必要じゃないかと。
だから、そこにキャリア教育的な視点を持ってやっていきたいという話を職員にしました。すると「それはいい!」と反応してくれたんですね。だったら、そこを一つの大きな学びの核にしていこうということを考えました。
そんなときに、町が取り組む沖縄との連携事業は、まさにうってつけだったんです。ОISTの学生達が学んで研究していることは、まさにイノベーション、新しい価値の創造です。そういったところを生徒に見せる、学ばせるというのは非常に大切なことだと思って取り組みました。
佐々木校長:合同遠隔授業についてですが、花徳小を含む5校の複式小規模校で実施しています。この取り組みについて、花徳小の6年生がとても良い言葉でまとめてくれました。
「遠隔授業で、僕たちは自分たちで意見を出し合う力がついた。未来につながる力を、これからも身につけていきたい。」ということを、先生のいない場で自主的に書いてくれていたんです。これがとても嬉しかった。
また、遠隔授業を通して、もちろん子ども達もいろんな力を身につけていくんですが、先生方の指導力もグッと上がりました。このことによって、各学校でミドルリーダーが育っていきます。合同遠隔授業は、5校の学年部でチームを作って動いているんですが、この3年間、様々に工夫して先生達が自走しているのをすごく感じました。
そして、この取り組みで改めて感じたのは、徳之島の子ども達にはアドバンテージがあるということです。遠隔授業を続けることで、これからの未来社会に必要な力を相当に身につけていける。
この徳之島型モデルをベースにした遠隔教育は、昨年、盛山文部科学大臣にも花徳小の取り組みを視察いただいたんですが、私は徳之島にいた3年間、この取り組みにとても魅了されました。
―今回の対談で、「挑戦」「チャレンジ」がキーワードだと感じました。
高岡町長:そうですね。今の子ども達が大人になったとき、社会は大きく変わっていると思います。技術もどんどん進歩し、価値観も変わる。そうした中で大事なのは、「リスクを正しく理解して、恐れすぎずにチャレンジできる子ども達」を育てることじゃないかと思います。急速に進歩していく技術を「使わせない」のではなく、「どう使うか」を大人が学んでしっかり示すことが大事で、そういうリテラシーを育てることが、私達大人の責任だと思います。
また、これからの時代、どこにいても国際社会と無関係ではいられない。だからこそ、未来を担う子ども達には、世界に目を向け、理想を持って政治や外交に関心を向ける、正しい世論の一部となる力も合わせて身につけて欲しい。
日本では「リスクがあるからやらない」という選択を取る場面がありがちかもしれませんが、世界を見ると、ある程度リスクを取ってでも、便利さや効率を優先して社会を進歩させている部分もある。もちろん安全対策をしっかり取ることは大事ですが、「失敗したくないから挑戦しない」という消極的な考えではなく、「わからないからこそやってみる」というチャレンジ。その経験がないと、子ども達は本当の意味で成長できないんじゃないかと思います。だからこそ、私達が目指すのは、「チャレンジする力」を育てる教育です。失敗を恐れずに一歩を踏み出せる子ども達を、町全体で育てていきたいと考えます。
―最後に、今後の町の施策について、教育長からお願いします。
福教育長:今回の子ども達との対談から得られた意見も踏まえながら、町の教育行政が、どうすれば、チャレンジ精神を持ち将来を見据えて行動できる子どもを育てられるのか。そういったことを考えながら、学校と連携し取り組んでいきたいと思います。
また今回子ども達の意見を聞く中で、町の教育行政がもう一歩前に踏み出し、様々なプロジェクトについて考えていく必要があると感じました。
今進めている「島われんきゃ教育ビジョン」に沿って、今回のように子ども達の意見を取り入れつつ、徳之島での教育の良さを生かして取り組んでいきたいと思いますが、それには学校や行政だけでなく、地域の力も必要です。
徳之島の豊かさを次の世代に引き継いでいく。そんなビジョンを大切にして取り組んでいきたいと思います。