くらし 新春対談 [那覇市長] 知念 覚×ゴリ[ガレッジセール](2)

知念:それは行政も同じです。調整会議をしていてみんな笑ってるけど、ドアを出たとたん「はぁ?市長何言ってるわけ」っていうのもあるだろうなと想像しながら僕はやっています。100点を求めたらだめだよ、250点の内容で持ってきなさいと言っているんです。250点の発想をしないと100点はとれません。100点を求めたら60点にしかならない。将来250点までいくように、今できることを考える。次の世代はそこからスタートすればいいと。
ゴリ:どの世界も同じですね。50超えたら何を残すかという話がありましたが、僕は40歳の時、当時は人生80年といわれていて、人生の折り返し地点に来たぞと思ったんです。振り返ると、沖縄出身だから芸能界に残れた部分も大きかった。沖縄出身だからこそ面白がられ、沖縄のロケが増え、芸人としての特徴ができて。それで、沖縄になにかを残したいと、意識的に沖縄を舞台にした作品を作り続け、沖縄新喜劇を立ち上げました(いまは休止中)。作品であったり、僕がいなくなってもまわっていくエンタメのサイクルであったり、なにを残せるかって。
知念:ゴリさんが言うエンタメの部分、文化芸術の部分で勝負するというのは、沖縄の地理的な条件やいろいろを勘案すると実はそれが早道なんですね。我々も経済の部分を見ていて、沖縄が何で勝負できるのかデータと突き合わせながら考えると、優位性があるのはエンタメです。産業規模自体はまだ大きくないけど、付加価値が大きい。エンタメは産業化できるんです。
ゴリ:僕、夢があるんです。ラスベガスにあるような、すり鉢状になった劇場で、マジックショーなどさまざまなショーを上演して、お酒や食事をしながら楽しめる客席があって、注文を通しながらウェイターさんが動いている、そんな劇場を作りたいんです。そこでは琉球王朝の成り立ちや泡盛の歴史といった、沖縄の文化を学べるコメディミュージカルを上演する。僕が観光客だったら開放的な気分を味わいにきてるので、飲みながら食べながら楽しみたい。いまは夜は民謡居酒屋に行くしかないですが、もっと酒飲んで食べながらケラケラ笑いながら沖縄の文化に触れて、ちゃんと民謡も聴けて、笑えてっていうエンターテイメントの劇場ができたら、ちゃんと経済が成り立つと思うんです。よしもと新喜劇って、なんばグランド花月それだけで衣装、舞台監督、演者、マネージャーって数百人の生活が、経済が成り立っているんです。僕は、これを沖縄に作りたい。できれば国際通りでやりたいんです。僕は国際通りが青春だから、国際通りをもっと盛り上げて沖縄の良さが伝わるような場所にしたいんです。
安里のホテル前広場での夜市がありましたよね、いっぱいテントがあって盛況で。てんぶす館こそ、国際通りのど真ん中だし、目の前の広場で夜市やったらもっといいんじゃないかって思います。劇場があって、飲んで食べて、コメディミュージカルが見れて、いつもテンブスの周りは賑わっている状況っていいなぁって。僕に資金があったらてんぶす買い取るのに、いったい誰が持ち主なんだろうって調べたら那覇市でした!
知念:劇場をホテルとミックスするというのもありかもしれませんね。横浜市でKアリーナの事例がありますが、劇場運営で儲からなくても、ホテル運営でペイすれば事業者は乗ってくると思います。
公園だとパークPFIという手法を使って、事業者と連携し公園の魅力を向上させる取り組みがあります。今度、漫湖公園にスタバができるんです。公園内にカフェを作り、その収益を活用して、遊具やバスケットボールプレイグラウンドを整備します。市からすると、市民のニーズに応じた施設が整備され、人もいっぱい来る、賑わいが生まれる、そういう場所にしたいという意図です。エンタメもそうですが、世界から振り向いてもらえるような産業を興すために、これからはGXや脱炭素といった環境に配慮した視点がないと、20年後の世界は誰も見向きもしない世の中になるのではないかと踏んでいます。
ゴリ:希望ヶ丘公園を会場に、音楽フェスのお笑い版を開催するのもいいかもしれませんね。ステージを設けて、こっちはベテランが出る、こっちは若手がでる、屋台もいっぱいあって、近所と調整できたらライブなんかも。僕はやっぱり国際通りが好きなんです。
知念:あと、工芸や演芸のオークションというアイディアもあります。沖縄にはそれだけの価値がある文化・芸能があり、落札者がそれをもとに”一流の体験”を作り提供する。そういうものを望む人たちも呼び込めるような、戦略的なまちづくりをしていきたいと思っています。そこでは芸能が柱になります。そこできちんと経済が回って、そのために東京から、世界から人が来るようなものを作り上げないといけないですね。
―ガレッジセールについて
知念:結成30年を迎えるゴリさんと川田さんがいいのは、安心感があるところです。見ていて本当に安定していて、安心です。言葉の選び方がうまいですよね。ハラハラしながら見ているのはけっこう疲れます。おおげさなものがはびこっている中で、安定感、安心感というものがあるから長く活躍されているんじゃないかと解釈しています。それは本当に財産だと思います。
ゴリ:若い時は僕も売れるために必死でしたが、大人になってくるといろんなことが見えてきますし、周りに支えられているというのがわかってきます。痛い思いもしましたし。若い頃は自分が頑張っているんだって、自分だけで走っているつもりだったんですけど、沢山の人が背中を押してくれているんだということに気づくとね。
知念:なにより、このたびは「かなさんどー」で主役に抜擢していただいてありがとうございます。(主人公のお父さんの名前が知念さとる)
ゴリ:この奇跡的な偶然を記念し、次回作「しかまさんどー」を那覇市で作りましょう。

※GX:産業・社会構造をクリーンエネルギー中心に転換していく取組み

■ゴリこと 照屋監督の最新作「かなさんどー」が1月より県内先行上映!
かなさんどー”それは、うちなーぐちで”愛おしい”という言葉。
家族の愛と許しの物語が、1月31日(金)よりシネマQほかで上映開始。県内は他に先駆けての先行上映です。
キーワード:認知症 許し 秘密 日記 伊江島 仲本工業

◇かなさんどー
出演:松田るか、堀内敬子、浅野忠信、ほか
監督・脚本:照屋年之
主題歌「かなさんどー」作詞・作曲:前川守賢

取材:秘書広報課
【電話】862-9942