くらし 新春対談 [那覇市長] 知念 覚×ゴリ[ガレッジセール](1)

■映画づくりと、まちづくり
2025年に、結成30周年を迎える市出身のお笑いコンビ「ガレッジセール」のゴリさんが、公開間近の監督作品「かなさんどー」とともに新春対談に登場!市長との対談は、笑いあり、真剣な思いがありの時間で、映画の話から、苦労話、また沖縄での夢までを語り合いました。

◇[市長]知念 覚(ちねん さとる)
1963年9月生まれ。首里中・首里高校・沖縄大学卒業。1985年那覇市役所へ入庁。30年の行政職を経て、7年半副市長を務める。2022年11月、第34代那覇市長に就任。市政のキャッチフレーズは「未来を拓く、なは☆ひとづくり、まちづくり、ゆめづくり」

◇[監督]ゴリこと 照屋 年之(てるや としゆき)
1972年5月生まれ。松城中・首里高校卒業。お笑いコンビ「ガレッジセール」として活躍するほか、映画監督としても活躍。前作「洗骨」は国内外で評価され、14作品目となる「かなさんどー」を今春公開。昔、平和通りにあったベビー用品店「林屋」はお母さんのお店。

知念:映画「かなさんどー」、一足先に拝見しました。現在と過去の描写がミックスされていて、描写が上手でした。伊江島のユリは本物なんですね。
ゴリ:撮影がGW前の2週間と決まっていて、県内でその時期大量に咲いている場所があるのがテッポウユリで、そこから伊江島を脚本の舞台にしました。仲本工業や室内シーンは、那覇市内でも撮影しています。最後のシーンで、テッポウユリが満開かどうかは予想がつかない部分でしたが多分咲いているだろうと。予備日が作れず、その日に絶対撮らないといけなかったんですが、雨も降らず花も満開で自然にも助けてもらいました。
―映画は許しや寛容がテーマになっていますね。
ゴリ:誰しも親子関係や人間関係で、許せないことってあると思うんですが、人の死を僕も何度も体験し、お通夜や葬式に行くたび、最終的にみんなこうなってしまうのかと思うと、自分はできるだけ憎しみとかそういうのをなくして死にたいなって。どれだけお金を持っていようが、車を何台所有していようが、あの世には持っていけないし、最終的に心の平穏を得て、あの世に行きたいなと。なので、最後にお父さんを看取る、そのときにどういった許しを娘が与えて、送ってあげるのかを中心に脚本を書きました。
知念:「かなさんどー」に出てくる夫婦の関係は、お互いのいいところを見ていますよね。人間いろんな面があるから、どの面を見るかという話で。いい面を見ていたら全てがうまく回ると思って、僕は人のいいところしか見ないようにしています。ドジャースの優勝会見でも、選手間ですべてリスペクトという言葉を使って、尊敬する部分にクローズアップしているんです。それでチームの輪がうまく回っている。同じ24時間ですから、いやなところを見ていやな思いをするより、いいところを見て楽しく笑って過ごすほうが人生得じゃないかなと。
ゴリ:いい面を見て、それをポジティブに捉えて、悪いところは忘れるって、大事だけどなかなかできないです。自分を幸せにできるのは自分なんでしょうね。自分を不幸にできるのも自分だし。前作「洗骨」では、沖縄のお年寄りからお褒めの言葉や手紙をたくさんもらって、人生の大先輩にほめてもらえて、すごく光栄で、次の作品を楽しみにしていると言ってもらえていたので、ようやく次の作品を届けられるのが嬉しいです。
知念:ゴリさんは、どういった経緯で映画を撮るようになったんですか。
ゴリ:芸人が映画を作る企画で、日大の芸術学部に行っていた僕にも声がかかって。短編作品で評価をいただいて現在に至り、「かなさんどー」が14作目になります。1作目のときは、撮影が地獄でもう二度とやらないと思ったんですよ。最終的に決定権があるのは監督だから、みんながどうすればいいか聞いてくるけど、自分に知識が無いから、カメラ、照明、役者、音声、道具さんに指示が出せないんです。22時終了予定が翌朝5時に終わって。押した時間が1か月間に感じるくらい、逃げ出したかった。周囲もイライラを態度に出してくるなか、すみませんって言いながら、引き受けた以上最後まで作らないといけないけどもう二度とやるもんかって。けど、編集して作品が完成した瞬間ドーパミンが放出されて。耳からも出ていたんじゃないかというぐらい気持ち良かった。うわ~かわいい~この作品、みんなに見てほしい~って。わが子ですよね。
今思えば、この方向であってるのかな?違うんじゃないかな?って人に何かを伝える自信がなかった。指示もできるようになって、自信もついて撮影が楽しめるようになった今は、ゼロから世界をつくりだす脚本作りが一番苦しいです。僕の場合、映画の現場で100人いない人数を動かすんですけど、かたや市長は、半端ない人数が関わっている中で物事を動かしていく。その苦労を考えると、機関銃で撃たれたぐらい胃に穴が開いてませんか?市長ってどういう精神力でいらっしゃるんですか。
知念:それでいうと信念ですね。自分の人生、先がだいたい何年て読めますよね。この年齢で市長になってよかったのかなと思うのは、いま61ですから生きてこれぐらいだろうと。ここから先は次の世代に何を残すかを考えるんです。50なるまでは自分中心で来るんだけど、それを越すと次に何を残そうかとなるんですね。それを自分の信念として、これを継いでくれる人を残していく、と。最後、これで良かったなと思えるような、確固たる信念があれば胃に穴はかろうじて開かないかなと思います。その時に重要なのが基本的に自分は捨てる、自分を守らないということです。この人は自分のために、自分が得するからこんなこと言っているんだって、そう思われたら誰も動いてくれない。自分は捨て身で、世の中がこうなるなら自分はどうなってもいいよって。そういう気持ちにならないと人は協力してくれません。
ゴリ:後世のために絶対いいものを残すという自信と信念があるから、心を強く保てるんですね。撮影現場では反対意見もでるので、自分が間違っているのかなと思うときもあるんですけど、冷静に考えて自分が合ってると思えたら意見を通すし、スタッフが言っていることが正しいと思えば柔軟に取り入れています。作品が良くなることが第一なので、自分のほうが作品が見えている、合っていると思えたら、1対100でも戦います。けど、そのあとの空気がきついんです。わかりましたってみんな持ち場に戻るんですけど、雰囲気が重くて。みんな、違うのになと思いながらも作品を撮り続けないといけない。僕もぐぬぬって悔しいんですけど、よーいスタートって言わなきゃいけない。そこは、作品のため、見た人に喜んでもらえるはずだという信念で作っています。