イベント 旧上歌会館(悲別ロマン座)日本遺産「炭鉄港」構成文化財に認定(1)

令和7年7月31日、旧上歌会館(悲別ロマン座)が日本遺産「炭鉄港」の構成文化財に追加認定され、文化庁から発表されました。
同会館は、本市が炭鉱まちとして栄え、そこで暮らした人々の記憶や様々なストーリーを紡ぐ炭鉱の遺産です。
この度、新たな門出を迎えた同会館について、これまでどのような歴史があり、取り組みがされてきたのかを振り返ります。

■旧上歌会館の歴史と取り組み
旧上歌会館は、昭和28年8月4日に福利厚生施設「住友上歌会館」として開館。独特なデザインの建築物で名を馳せた故・渡邊洋治(わたなべようじ)氏により設計されました。
映写機2台を備え、映画鑑賞施設や憩いの場として活用され、炭鉱労働者や市民に親しまれていました。
しかし、国の方針で石炭から石油へのエネルギーの転換が進んだことによる炭鉱の閉山が相次ぎ、昭和46年の住友炭鉱閉山後に同会館は閉館。
昭和59年に放送された倉本聰(くらもとそう)氏脚本のテレビドラマ「昨日、悲別で」の舞台となったことで脚光を浴びましたが、閉山によって引き上げることとなった住友炭鉱が昭和61年に市へ寄付。その後市民による保存の動きもありましたが、急激な人口減少や管理者不在などが続き、同会館は開館と休館を繰り返し、令和4年ごろまで閉館状態になっていました。
その旧上歌会館を再興しようと、市と市内ボランティア団体のウタピリカ(佐藤友美(さとうともみ)代表)が連携し「RE:上歌プロジェクト(ロマン座再生プロジェクト事業)」を立ち上げ、令和5年から同会館の清掃、花壇整備と花苗の育成管理を行ってきました。
令和6年6月に市が炭鉄港推進協議会に加入、令和7年2月に日本遺産「炭鉄港」構成文化財への認定申請を行い、今年4月からは毎月一回、同会館で様々なイベントを行っています。
有志の皆さんによる敷地内の草刈りや清掃、市が枕木の交換や紹介看板の設置、地域おこし協力隊が情報発信、商工会議所が観光経済に関わるなど、官民が互いに手を取り合って取り組むこのプロジェクトが評価され、構成文化財認定へとつながりました。
8月25日には記念セレモニーと、敷地内に新たに設置された紹介看板の除幕式も行われ、今後ますます道内外から目を引く存在となり、観光振興、そして交流人口の増加につながることを期待します。

■旧上歌会館は歌志内の栄枯盛衰を表す象徴
「炭鉄港」は、本市のほか、道内14市町(小樽市、夕張市、室蘭市、岩見沢市、美唄市、三笠市、赤平市、芦別市、江別市、栗山町、月形町、沼田町、安平町、上砂川町)にある、日本の高度経済成長を支えた「炭」鉱、室蘭の「鉄」鋼、小樽の「港」湾と、それぞれの地域をつなぐ「鉄道」を舞台に、様々な歴史ストーリーを持つ日本遺産です。その中でも旧上歌会館は、炭鉱で働いていたかたがた、そこに住む人々の娯楽施設(映画)や憩いの場として重要な役割を担い、当時の歌志内の生活・文化を後世に伝えることができる重要な建物です。
当時、同会館に足を運んでいたという本町在住の本城さんは「初めて見たとき、他にはない独立した建物の堂々たる姿に圧倒され感動したこと、友人と何度も映画を見に行ったのを覚えています」と思い出を話してくれました。