- 発行日 :
- 自治体名 : 北海道倶知安町
- 広報紙名 : 広報くっちゃん 令和7(2025)年6月号
■『游』1992年小川原脩画
四季折々、美術館の庭にはたくさんの鳥が訪れます。25年かけて大きく成長した木々や青々とした芝生は、鳥たちにとって居心地が良いようです。春になるとハクセキレイの子育てが始まり、渡り鳥の群れもやって来てにぎやかさも増してきます。夏に向かって、今度はどんな鳥たちが美術館の庭に姿を見せるでしょうか。
この作品には、温かみを感じる暖色の空間に、ふんわりとしたタッチで白い木と数羽の鳥が描かれています。幹の周辺を飛び回るもの、気ままに止まるもの、自由に振る舞う小鳥たち。顔こそありませんが、優しく見守っているような表情を感じさせる木の存在。お互いに信頼し、思いやっている関係すら想像できます。
題名の「游」という字には、およぐ、うかぶ、あそぶ…などの意味があり、木と小鳥の優しい印象にしっくりときます。小川原脩の遺した草稿に「(游)について」というものがあります。それは、小川原の支援活動していた「作品を考える会」からの励まし、そして北海道開発功労賞受賞に対しての感謝がつづられていて、作品のことは触れずに記述は途中までとなっています。游は、感謝の思いを託していた作品なのかもしれません。
文:沼田絵美(小川原脩記念美術館副館長)