子育て 子育てコラム

◆完璧な人なんていない
東神楽町より依頼を受け、皆さまに子育てや保育について発信することになりました名寄市立大学の傳馬と申します。専門的な立場から、子育て経験談を含め、「子育て中のご家庭にアドバイスなどを」とお話を受けました。
確かに、私が専門とする研究や大学での授業は、子育て支援や保育実習など、肩書を見るとアドバイスができそうな気もしてきます。
現在、私自身、2人の子どもの子育て真っ只中です。すでに子どもたちは大学生と高校生になりました。しかし、幼い頃の大変さとは異なりますが、その時々の子育ての悩みはいまだに尽きません。
子どもがまだ幼かった頃、妻が反抗期の子どものことで夫であり父親である私にどうしたら良いかと詰め寄ったことがありました。答えの見えない状況に二人でため息をついていた時、
私「そうだ、市内に保育系の大学があるんだから、電話で相談できる専門家はいないか問い合わせてみたら!」と苦し紛れに話したことがありました。
妻「えぇ!?そんな相談にのってもらえる人がいるの?」
私「うん、きっと私につながると思うけど…」
妻・私「…それじゃ、ダメだ…」。
自分自身が幼い頃、この人が言うのだから間違いないと、当たり前に信じ見上げていた存在、それが親でした。
今、自分がその親となり、子どもの目の前にいる時、本当にあの時のような親になれているのだろうかと不安になります。当たり前ですが、親の経験年数は、子どもの年齢であり、1歳の子どもの親であれば親経験は1年間です。仮に成人と言われるようになった18歳の子を持つ親であっても、たかだか18年間の経験でしかありません。そうはいっても、多くの親がそうした道を辿りながら、脈々と子育てが受け継がれてきているのも確かです。そうであれば、完璧な親なんて、そもそもいないのではないのでしょうか。
カナダの親支援に「完璧な人なんていない(Nobody’s Perfect)」というプログラムがあります。多民族国家を背景として、肌の色も、価値観も、互いの違いを認め合い、「完璧な人はいない、誰も完璧な親などいない。親として生まれついた人などいないのだから。また完璧な子どもというものもいない。お互い、できる限りのことをしていけばいいのだ」と冒頭に記された教材が、カナダの子育て文化を支えてきました(小出まみ『地域から生まれる支え合いの子育て』ひとなる書房、1999)。
「子育てや保育の専門家も完璧な人はいない」と初回に言い訳をして、この先、皆さんと子どもとの向き合い方や、地域で子どもを育てることについて、一緒に考えていくことができればと思います。よろしくお願いします。

傳馬淳一郎(でんまじゅんいちろう)
名寄市立大学保健福祉学部社会保育学科准教授。保育所保育士、学童保育・児童館での勤務の後、保育者養成に携わる。大学では、保育実習指導を中心に、子ども家庭支援論、家庭支援実践演習、保育者論等を担当している。子どもの育つ環境、保育者の養成とキャリア、離職等を研究テーマとしながら、保育者向けの各種研修や保育現場の公開保育、園内研修のサポートを行っている。