健康 病院だより No.105

●靴の中から始める健康改革
私達の足は毎日頑張っています。「歩く、走る、立つ」当たり前のように使っている足元ですが、実は“縁の下の力持ち”どころか、文字通り「人生を支える土台」と言っても過言ではありません。それ故に、この大事な足にトラブルが起きると、身体全体の調子も狂ってしまうのです。
たとえば、「偏平足」、「外反母趾」、「足底腱膜炎」、「変形性膝関節症」、さらには「脊柱側弯症に伴う歩行の左右差」など、足の問題が原因で起こる症状は意外とたくさんあります。中でも見落とされがちなのが「魚の目(うおのめ)」や「タコ(胼胝・べんち)」と呼ばれる足裏の痛みです。地味だけど、歩くたびに「イテテ…」とつぶやきたくなる厄介者です。
こうした足のトラブルの裏には、足裏への“圧の偏り”があります。本来、足には内側縦アーチ・外側縦アーチ・横アーチという天然の「衝撃吸収クッション」が備わっています。ところがアーチが潰れたり、極端に高かったりすると、体重が一部に集中し、皮膚や関節、筋肉に過剰なストレスがかかるのです。
そして、もう一つ理学療法でよく使われる考え方、「運動連鎖(キネティックチェーン)」。これは、「足が変われば膝が変わり、膝が変われば腰が変わる」というように、身体の一部の動きのズレが、連鎖的に全身に影響を及ぼすという理論です。例えば、足のアーチが崩れてかかとが内側に倒れると、すねの骨のねじれが起き、結果として膝の軟骨がすり減る…なんてことも。逆にいえば、足元を整えれば、その上に積みあがる身体も整ってくるのです。
ここで登場するのが「インソール(足底板)」。ただの“中敷き”と侮るなかれ。これは足にかかる力を上手に分散し、アライメント(骨や関節の並び)を調節し、足元から全身のバランスを整える頼れるアイテムなのです。痛みの軽減はもちろん、歩き方の改善や、姿勢・体幹の安定にも効果があります。まさに「靴の中の小さな整備士」といえるでしょう。
そして、この足元のカスタマイズを担うのが「義肢装具士(ぎしそうぐし)」という国家資格を持つ専門職です。義足や義手の制作だけではなく、オーダーメイドのインソールや装具を通じて、患者の動作をサポートする職人さんです。
インソールによって、足の痛みや違和感、歩きにくさといった問題が根本から改善されることも多くあります。「たかが魚の目」と放っておいたその痛みも、インソールひとつで日常がぐっと快適になるかもしれません。
現在、当院には月に一度、釧翔義肢株式会社より義肢装具士が来ていますので、インソールを作成することが可能です。
靴の中から始める“健康改革”。あなたの足元、見直してみませんか。
(文責:理学療法士 高田拓幸)
※詳しくは本紙をご覧ください。

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