文化 あしょろ自然誌 Vol.58

皆さんは風穴をご存じでしょうか?十勝では然別湖周辺の風穴地帯がナキウサギの生息地として有名です。風穴とは夏の高温時に山の岩の隙間や空洞から冷気が出てくる現象です。岩が堆積した斜面や洞窟といった地下に空隙がある場所でいくつかの条件が整うと、岩の隙間から冬に冷気を取り込み夏に吹き出します。北海道演習林内の清川風穴で2022年から継続する温度計測によると、夏季でも9℃以下の低温を保っています。そのため、風穴周辺にはその場所よりも低温な地域や高標高地を好む植物が生育します。清川風穴は標高300メートル付近に位置しますが、雌阿寒岳の900メートル付近から見られるコケモモが周辺に群生しています。足寄町内では他に阿寒富士の西麓で風穴が確認されており、高山性のミズゴケなど希少な植物が記録されています。風穴は地球が今より寒かった氷期から生き残る生物の隔離分布地とも言われ、生物の分布や移動を研究する上で興味深い場所です。

詳細:九州大学北海道演習林(山内康平・榎木勉)
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