- 発行日 :
- 自治体名 : 岩手県住田町
- 広報紙名 : 広報すみた 令和7年2月号
私たちの身近に存在し、日々当たり前に目にする住田の山並み。先人が植え育ててきた森林は、さまざまな形で私たちの生活を支えています。
森林の役割が将来にわたって発揮されるためには、適切な森林管理が欠かせません。本号では、私たちの身近にある森林に目を向け、その今後について考えていきます。
■町の森林の現状
本町は面積の約90%を森林が占め、そのうちの約半分は戦後の木材需要の増大を背景に、人の手で植えられた人工林です。町内の山に盛んに植林された時期から50年以上が経過している中で、木材価格の低迷や担い手不足などの問題から森林への関心が薄れてきています。その結果、人工林を育てるために必要な手入れや、十分に成熟した人工林の伐採、伐採後の植林が行われない箇所が散見されます。
■森林が持つ役割
森林には、木材の生産以外にも、さまざまな役割があります。その代表的なものが、水源かん養機能とよばれるものです。森林は雨水を受け止め、それをゆっくり川に流します。そのため、降水量の多少に関わらず川の水量が一定に保たれます。また、木の根がしっかりと張っている森林では、土砂災害も発生しにくくなります。
■木を植えたら手入れが必要です
森林が持つ役割を十分に発揮するためには、根がしっかり張っていて土が流れ出ないことが重要です。人工林は初めは密に植えられるため、成長に応じた間伐(間引き)が必要です。間伐によって林内の密度を整えることで、植えた木の成長が促進されるだけでなく、林内に光が入って草や低木も生え、それらの根が土を固定してくれます。
また、伐採後は確実に森林を復元することも重要です。その方法には、植栽による「再造林」と、自然に落ちた種などから木が育つ「天然更新」の2通りがあります。どちらの方法も、水分や日当たり、動物による食害などの影響を強く受けるため、確実に森林に戻るよう、必要に応じて手入れや見回りを行うことが重要です。
■本町の森林の特徴と取り組み
本町では、国際的にも高いレベルで森林の管理を進めていくため、FSC森林認証(以下、「FSC」)の取り組みを行っています。FSCとは「環境・社会・経済の面で持続可能な森林管理が行われていること」を認証する国際的な制度です。本町では、入会を希望された方々が所有する私有林に町有林を加えた「住田町森林認証グループ」を組織し、これらの森林区域について平成16年にFSCを取得して以来、毎年継続して認証を受けています。
なお、本町ではFSCに加入している森林における施業(再造林、獣害対策、下刈、除伐、枝打ち、間伐)に対して町独自の補助事業を設けており、森林の造成や整備にかかる費用負担の軽減を図っています。
■森林環境税を有効活用
森林環境税とは、1人年額1000円の国税であり、今年度から課税が始まりました。その税収は、都道府県・市区町村に分配され、森林整備の促進や林業振興などに活用されます。
本町でもその財源を活用し、私有林整備の促進、林業の担い手対策、林道の維持管理、公共施設の木質化などの取り組みを進めています。
■森林所有者の皆さまへ
森林は所有者の財産であると同時に、多くの人々にとって大切な役割を持つ存在です。この役割が損なわれないように、定められた法令やルールに基づいて森林を管理していただく必要があり、町では森林所有者が守るべき責務を下図のように定めています。豊かな森林を次世代に残すため、適正な管理に対するご理解とご協力をお願いします。
◇森林所有者の責務
気仙地方森林組合の千葉憲一さんに森林管理の重要性についてお話を聞きました。
■適切な管理で森林の未来を守る
森林は水源のかん養や土砂災害防止、地球温暖化の防止などの多面的機能を持つ地域の財産です。当組合では、伐採跡地の再造林や間伐など、適切な森林整備の推進を通じ、こうした機能を継続発揮させていくことが大きな役割と認識しております。次世代へより良い森林をつないでいくために、今後とも努めてまいります。
気仙地方森林組合 業務課長 千葉憲一さん
問い合わせ:林政課
【電話】46-3868