- 発行日 :
- 自治体名 : 岩手県住田町
- 広報紙名 : 広報すみた 令和7年4月号
町内の個人宅で保管されていた経巻が、奥州藤原氏ゆかりの極めて貴重な仏教経典「紺紙金字一切経(こんしきんじいっさいきょう)」の一部である可能性が高まり、多くの注目を集めています。
「紺紙金字一切経」は現存する経巻のすべてが国宝に指定されており、関係者からは「国宝級の大発見」と期待の声が上がっています。
■「紺紙金字一切経」とは
奥州藤原氏が中尊寺(平泉町)に奉納した写経「中尊寺経」の一つで、3代当主・秀衡が1180年ごろに奉納したとされており、仏教経典の集大成「一切経」を、紺色に染めた紙に金泥で書写しています。紺地に映える金文字に加え、各巻にはきらびやかな見返絵(仏画)が描かれ、当時の仏教信仰や芸術性の高さを示す、仏教書写の最高峰とされています。
同時に当時の宗教、文化、政治の分野における奥州藤原氏の権力も象徴しており、歴史的にも非常に高い価値を有しています。
これらのことから、紺紙金字一切経は、現存が確認されている2724巻(中尊寺収蔵)の全てが国宝に指定されています。
■町内で保管されていた経巻
このたび町内で確認された経巻は、個人宅で極めて良好な状態で保管されていました。本来は巻物ですが、貼り継ぎ部分がはがれ、18枚の経文に分かれています。また、本来の姿からは、表紙、見返絵、経文1枚などが失われていると考えられています。現存部分は、全長約9・3メートルです。
表題と尾題には、「大乗大集地蔵十輪経第二」と書かれ、一切経を構成する「大乗大集地蔵十輪経」の第2巻であることが分かります。
■紺紙金字一切経の一部とされる理由
(公財)岩手県文化振興事業団の羽柴直人上席専門学芸員によると、以下の点から、今回の経巻が紺紙金字一切経のうちの1巻である可能性が非常に高いと考えられるとのことです。
・全体的な特徴から、平安時代の写経書と考えられること。
・体裁、寸法など、紺紙金字一切経と考えることに矛盾がないこと。
・中尊寺収蔵の2724巻には「大乗大集地蔵十輪経巻第二」が含まれていないこと。
・使用された漢字、体裁から、紺紙金字一切経と同様「宋版一切経」を手本にしているということが分かること。
・中尊寺ゆかりのお経が気仙地域に存在することは、平泉との地域的なつながりから十分に考えられること。
■国宝級の大発見に嬉しさと驚き
町教育委員会
松高正俊 教育長
住田町から国宝級の文化財が見つかったことはとても嬉しいニュースです。実物を見たときは、保存状態が良く、これが約850年前の経巻かと思うほどでした。また、文字の美しさにも驚き、紺紙にこの文字をどのようにして書いたのかを想像していました。
今後、地域の宝としてどのように保存・活用していけばよいか、所有者の方や関係機関と検討していきたいと思います。