- 発行日 :
- 自治体名 : 宮城県利府町
- 広報紙名 : 広報りふ 令和7年3月号
■ウィッチハント
小学生の時、永井豪(ながいごう)氏の『デビルマン』(漫画版)を読んだ時の衝撃は今でも忘れません。一見人のよさそうな人間が「人間に害をなす悪魔が近隣にいるかもしれない」とひとたび疑念を抱き始めると悪魔以上に悪魔に変心。同作品の「人間とは何か」という深いテーマに心をえぐられたものです。
SNSでの情報発信が一般的になってきた昨今、東京都知事選挙、兵庫県知事選挙、そしてフジテレビのタレントをめぐる問題等、その影響力は既存のメディアを凌駕する力を持つにいたりました。ただ、事の真相や問題の核心、真理をついているか、という点ではかなりの不安が残ります。
私自身もその恐ろしさを最近経験いたしました。ご存じのように利府町は4月から上下水道の「民間委託」が始まります。そのプレスリリースの内容がネットで紹介されると瞬く間に広がり、炎上いたしました。曰く「民営化して外国資本に売り渡す気だ」「外国資本に権利が買われたら水道料金が爆上がりする」「町長は外国人みたいな顔をしている。国籍を調べろ」…。利府町が取組むのは「民営化」ではなく「民間委託」です。その違いも分からず非難、誹謗中傷を繰り返します。「民間委託」ですので廃品回収を民間業者さんにお願いしているのと変わりありません。現状では、技術者確保、コスト削減等が困難なことからの決断です。ちなみに町内から際立ったクレームなどはありません。
高等教育が多くの人々に普及した現代ではありますが、中身を見ない、内容を読まない、キーワード、しかも誤った言葉のみが独り歩きし、あばれ、騒ぎ、炎上し、いくら正論を述べても「疑惑は残った」とばかりに並び立て、自分たちの正義よろしく、乱暴にことを荒立てます。
コロナ禍が収まったと思った矢先、ネットの少数意見により「スケープゴート」や「魔女」に仕立て上げられ、場外乱闘的に世論が形成され、事実関係むなしく、勝手にイメージ化され、多くの人が傷つき、人生が捻じ曲げられていきます。まったく恐ろしい世の中です。
年度の変わり目にこの「魔女狩り」を喜ぶような世の中が刷新されることを期待します。日本の「魔法使いサリー」や「ひみつのアッコちゃん」のような「魔女っ子シリーズ」のように和やかに、柔らかくいきたいものです。
利府町長 熊谷 大(ゆたか)