文化 大局観(たいきょくかん)で今を… 歴史好き市長のつぶやき〈第111回〉

横手市長 髙橋大

卒業シーズンも過ぎ、新年度が始まりました。十文字中学校の卒業証書にも使われている十文字和紙。十文字地域は江戸時代に和紙作りが盛んでしたが、定着には難航したようです。江戸時代前期に楮こうぞを植え紙職人へ売っていたものの、産業としては定着しませんでした。江戸時代後期には梨木羽場(なしのきはば)村に引っ越してきた永吉が、伊達(福島県)から紙漉(かみすき)職人を呼び、村民へ指導しました。しかし、技術が不十分であり楮が薪(まき)にされるなどして衰退。その後、湯口庄治(ゆぐちしようじ)が更木(さらき)村(北上市)の紙漉職人を助けたことが縁で紙漉きが盛んになりましたが、途絶えてしまいました。
睦合・植田地区では江戸時代後期に信太太右衛門(しんたたえもん)が紙漉きに取り組み、その指導を受けた土谷(つちや)(土屋)治兵衛(じへえ)が紙漉指導者として大成しました。現在は、唯一技を受け継いだ職人が生産しています。十文字和紙の技が今後も受け継がれることを願います。
さて、市では今年度の新事業として、すべての年齢で幼児教育・保育料の無償化を実施します。子育て世代が安心して子どもを産み育てられる環境づくりを推進する観点から、横手市ができる施策の一手として行うものです。また、通院が困難な方に対して、医師や看護師が医療機器を搭載した車両で訪問診療を行う、『医療MaaS(マース)』の整備に向けて動き出します。この他の主な事業は今月の市報で紹介していますので、ぜひご覧ください。

十文字和紙…寛政年間に秋田藩が行った殖産振興政策として、紙漉きが始まったとされる。

・柔らかい手触りの和紙の卒業証書はあたたかみを感じます