- 発行日 :
- 自治体名 : 福島県郡山市
- 広報紙名 : 広報こおりやま 2025年3月号
おかしな表情や動きで、見ている人を自然と楽しくさせるひょっとこ。古くから全国各所で伝わるひょっとこは、実は郡山の西田町高柴地区でも江戸時代から300年以上にわたり存在してきました。ひょっとこは火を守る神様として、その対となるおかめは福を招く神様として昔から地域で伝わり、今でもその姿を見せてくれます。
今回は、その独特なキャラクターでいつも私たちを元気にしてくれるひょっとこについて、その文化を守り、広げようと取り組む人々を紹介します。
○時代に合わせながら受け継がれる伝統
郡山のひょっとこ文化の起源は、市指定重要無形民俗文化財である「高柴の七福神踊り」と言われています。西田町高柴地区では昔、小正月に家を回り、七福神やひょっとこの踊りを披露することで、五穀豊穣や家内安全を祈っていました。今では暮らしの変化に合わせ、例年5月頃にデコ屋敷で開かれる「高柴デコ祭り」で、その姿とともに伝統の唄や踊りを披露しています。
○地域独自の文化〝半面のひょっとこ〟
高柴のひょっとこ面の特徴は、口が覆われていない半面であること。口だけでさまざまな感情を表現できるので、個性豊かなひょっとこ踊りを生み出しています。
お面はデコ屋敷の各工房で木型や和紙を使い、それぞれの工夫のもとに作られています。
○伝統の地 高柴デコ屋敷/おいち茶屋 高柴 利広さん
デコ屋敷では、4軒の工房が数百年の伝統を受け継ぎ、張子(はりこ)人形や張子面、三春駒などを作っています。集落では昔ながらの技法で工芸品を手作りする職人の姿を見られるほか、周辺の文化財や自然などを職人が案内しながら歩くデコ散歩や、張子の絵付け体験などが楽しめます。素敵な工芸品との出会いがきっとありますので、ぜひお気軽にお越しください。
問合せ:高柴デコ屋敷観光協会事務局(おいち茶屋内)
【電話】971-3907
デコ屋敷の紹介動画をYouTubeで公開中です。張子の制作方法などがよく分かる内容ですので、映像を見た後は、ぜひ現地にもお立ち寄りください。
問合せ:観光政策課
【電話】924-2621
■職人が語る 伝統を受け継ぐということ
ひょっとこ面や張子人形など、手作りで温かみのある作品を生み続けている4軒の工房。デコ屋敷に代々伝わる踊りやお面作りの技術は、それぞれの職人の思いがあってこそでした。
○気張らず自然に、先人の思いを受け継ぐこと
橋本広司(ひろじ)民芸17代目 橋本 広司さん
ひょっとこは生まれた時からずっとそばにいる存在なので、お面作りも踊りも、自分の生活の一部でした。本来気弱な自分も、面をかぶれば自然と力が湧いてくるのがひょっとこの魅力です。決まった踊り方なんてなくて、頭をからっぽにして踊るのが一番。そうして踊るうちに、先祖もこうして受け継いできたんじゃないかって感じるようになりました。お面も同じことで、先人の魅力的な作品に近づけるには、自然な気持ちで作ることが大切です。
伝統についても、あれやこれやと気を張って考えず、自然に思い、感じたことを後世に継ぐ。それくらいがちょうどいいと思います。
○なんでも丁寧に作る、それが一番
彦治民芸10代目 橋本 高宜(たかよし)さん
先代が描いた三春駒が十二支の郷土玩具として日本で最初の年賀切手に採用されるなど、親の偉業を誇らしく思うと同時に、一日中働く姿を見てきたので、初めは伝統を守るより、親に楽をさせてあげたい思いで継ぎました。一方で、毎年作品を買ってくれるお客さんがいるのは、うちが丁寧に作っているからだと、お客さんと話す中で気付いていきました。
伝統は、先人が築き上げてきた技術を大切に受け継ぎ、丁寧に、ごまかさずに作ることにあると思います。踊りや囃子(はやし)は息子に引き継ぎましたが、これからもうちでしか表現できない技法を大切に、信念を持って作り続けていきたいですね。
○先人への敬意と、未来への挑戦が大切
本家大黒屋21代目 橋本 彰一さん
古くから続く伝統工芸に誇りを持ち、自分も代を継いで囃子やお面作りに携わってきました。これからもこの文化が続いてほしい一方で、時代に合わせて今の人に喜んでもらえるものを作っていくことも大切だと思っています。先人の技術を継承しながら、これまでの製法に新しい技術を取り入れ、可愛い小物や飾りたくなる作品を作ったり、作った物の新たな使い道を考えたりして、研究や挑戦を繰り返していきたいですね。
ゆくゆくは、郡山のどの家にもデコ屋敷のお面や張子が飾られていて、それを誇りに思ってもらえるくらい、伝統が根付いたまちになってほしいです。
○技術を守りながら、使う人のことも思う
本家恵比寿屋20代目 橋本 恵市さん
小さい頃から七福神踊りやひょっとこ踊りをしながらお面作りもしてきました。踊りはもう引退しましたが、自分が作ったお面をかぶってもらったり、飾ってもらったりするとやっぱりうれしいですね。だからこそ、使ってくれる人のために手抜きは絶対にできません。和紙を7枚、8枚と張り合わせ、指で厚さを均一にしながら、もっと動きに合ったお面を作るにはどうするかなど、毎日が勉強です。
和紙の価格高騰や継承の仕方など考えることもたくさんありますが、代々受け継いできた技術を大切にしながら、使ってくれる人に合ったお面をこれからも作り続けていきたいです。