- 発行日 :
- 自治体名 : 福島県いわき市
- 広報紙名 : 広報いわき 令和7年5月号
■ふるさとの誇りを胸に それぞれのいわきハタチ酒プロジェクト
◇体験で人生を豊かに
発起人・澤木屋代表
永山(ながやま)満久(みつひさ)さん
日本酒文化を伝えたい、若い皆さんと地域に根差した活動をしたいと思い、2015年に動き始めました。「やるからには長くやりたい」と覚悟を持ち、このプロジェクトに共感してくれる酒販店や酒蔵、米農家を探しました。販売店探しでは、完成していない日本酒の魅力を伝えることが難しかったですが、半年ほどで1期生を迎えることができました。
以前の参加者がボランティアに来てくれるなどコミュニティが育まれているのを感じます。若い方に参加していただき、この体験によって人生が少しでも豊かになることを期待しています。
◇この1本に思いを込めて
太平桜酒造代表
大平(おおひら)正志(まさし)さん
発起人である永山さんの思いに共感して、第1回目から蔵元として参画しています。当初は教えながらできるのか不安もあり、どの工程を体験してもらうか試行錯誤しながら進めてきました。できるだけ多くの体験をしてもらいたいと思い、工程を増やすなど参加しやすい工夫をしてきました。
酒造りは、酒米農家の方に感謝して1本1本が勝負だと思っています。この取り組みをきっかけに、農家の方との連携も深まりました。
若い皆さんが酒造りに興味を持ってくれるのは嬉しく、これからも続けていきたいです。
◇ものづくりの良さを
酒米農家
滝(たき)正嗣(まさつぐ)さん
私は2021年から協力しており、今は私の水田で酒米「夢の香」を育てています。以前に栽培地として協力していた方が続けられなくなってしまいましたが、人と人とのつながりが大事と思い、酒米の栽培を引き継ぎました。
令和5年の集中豪雨の際には大きな打撃を受けましたが、だからこそ農産物ができると非常にやりがいを感じます。参加する皆さんには、そのものづくりの良さを感じてもらいたいです。
参加者の皆さんから若さをもらっているようで新鮮な気持ちになれ、私にとっても良い経験です。
◇ふるさとを伝える仕事を
プロジェクト7期生
伊藤(いとう)向日葵(ひまり)さん
高校生のときに、部活動でハタチ酒を取材しました。参加者のために奮闘する皆さんの姿を見て、私も20歳になったら参加しようと思っていました。
実際に参加してみると、酒米と一般米を食べ比べさせてもらったり、蒸した酒米の独特の触り心地を感じたりと、他ではできない貴重な体験をさせてもらいました。いわきで長年ものづくりに取り組んできた皆さんから刺激をもらい、いわきをさらに好きになりました。
将来は、ふるさといわきに帰ってきたいという思いが芽生え、この体験を生かし、いわきの良さを伝えていけるような仕事をしたいです。
■ふるさといわきを思う
ハタチ酒は、プロジェクトに携わった人たちの思いが凝縮されています。
自分たちで植えた苗が米になり、そして香り豊かな日本酒へと成長するのとともに、今回参加した7期生7名の郷土愛も育まれてきました。
1本の日本酒造りを通して育まれた「ふるさといわき」への誇りは、着実に次の世代へと引き継がれていきます。
まもなく、第8期生たちの新たな「ハタチ酒」造りが始まります。
■若者との対話
いわき市長
内田 広之
いわきハタチ酒プロジェクトは、若者の郷土愛を育み、将来いわきで活躍する若者を生み出すきっかけになる取り組みとして期待しています。
市内の中・高校生と話すと、いわき市の未来への希望を熱く語ってくれる生徒が多いことに驚きます。若者を交えた会議で「我々も政策づくりへ参画させて!」と直訴されることもあります。とてもうれしいです。
これまでも、いわき青年会議所などの企画で、私も若者との意見交換の場をいただき、その都度、新鮮なご意見をいただいてきました。
来年は、市政60周年。この節目に、市政100周年までを見据えた政策ビジョンを、若者の意見も重く受け止めて創っていきたいです。
そして、高齢者や働き盛り、子育て世代の考えもそれぞれ、若者に受け止めてもらいつつ熟慮してもらい、いわきの可能性を引き出したいです。