- 発行日 :
- 自治体名 : 福島県喜多方市
- 広報紙名 : 広報きたかた 令和7年9月号 No.237
喜多方市地域・家庭医療センター「ほっと☆きらり」
医師 武田 仁
■高齢者はどうして寒さに弱い?
みなさんこんにちは。ご高齢の方で、寒さ、涼しさがとても苦手な方がいます。真夏なのに衣服を5~6枚も着込んでいたり、部屋にせっかく冷房があるのに「エアコンが苦手」と使おうとせず、実際に熱中症になる方もいます。特に体力が衰え、ほとんど部屋から出ない高齢の方に多いように感じますが、なぜこれほど寒さ、涼しさが苦手なのでしょう?
加齢による筋肉や皮下脂肪の減少、代謝の低下、自律神経の働きの衰え、さまざまな要因が関係していますが、その一つに「褐色脂肪組織」の老化があるとされています。ヒトを含む哺乳類の多くは、外気温によらず一定の体温を保つ「恒温動物」に分類されていますが、そのための熱の大部分を発生させているのが褐色脂肪組織です。褐色脂肪組織は、成人では鎖骨の上のくぼみ、背骨の周り、頚部や脇の下に多く存在し、主に脂肪を分解することで熱を発生させ、全身を温めています。褐色脂肪組織は加齢とともに減少し、機能も低下して、十分な熱を発生させることができなくなり、寒さ、涼しさ刺激に対して脆弱になると考えられています。
褐色脂肪組織は熱の発生だけでなく、さまざまなホルモンを分泌し、肥満や心疾患、糖尿病、加齢に対抗しているとされ、定期的な運動を行うことで褐色脂肪組織が活性化され、加齢や生活習慣病を予防できるのではないかと期待されています。寒さ、涼しさが苦手な高齢の方には、無理のない範囲で、定期的な運動の習慣を勧めてみてはどうでしょうか。