文化 特集 歴史と演芸で親しむ「忠臣蔵」(3)

■演芸で親しむ忠臣蔵
忠臣蔵のストーリーは、講談・浪曲・落語の題材としても親しまれています。忠臣蔵は壮大な物語です。そのため、講談や浪曲では、いくつにも細かく分けた演目があります。
松の廊下から討ち入りに至る本筋を「本伝」、四十七士の個別の物語を「銘々伝」、義士以外の周辺の物語を「外伝」と呼び、それらが全部で300席以上あるといわれています。
笠間市立図書館にあるCD資料などから、ぜひ聴いてもらいたい演目をご紹介します。

▼ナビゲーターは社会人落語家の万葉亭小太郎(まんようていこたろう)さん!
笠間市包括支援センターの職員として日々励む傍ら、市内などで行われる落語会で落語を披露しています。

▽大石東下り(おおいしあずまくだり)
忠臣蔵屈指の名場面の一つ。大石内蔵助は、垣見五郎兵衛(かきみごろべえ)という名前を名乗って、討ち入りのために江戸に向かいます。ところが神奈川宿で、本物の垣見五郎兵衛と鉢合わせします。その危機を乗り越えたのは…。
なぜ、忠臣蔵は人気なのか。その真髄がうかがえる一席です。

▽南部坂雪(なんぶざかゆき)の別(わか)れ
忠臣蔵ではさまざまな別れの場面が描かれています。それを象徴する名場面がある一席。討ち入りを前に、浅野内匠頭の妻・瑤泉院(ようぜいいん)に暇乞いをする大石内蔵助は、本心を隠しながら別れを告げます。
クライマックスへの緊張感が、最大限に高まるでしょう。

▽天野屋利兵衛(あまのやりへい)
天野屋利兵衛は赤穂義士を支援した商人。奉行所に疑惑をかけられ、重い拷問を受けながらも赤穂義士の秘密を守ります。
「天野屋利兵衛は男でござる」は、あまりにも有名な決め台詞。外伝の中で最も有名な人物伝といえます。

▽荒川十太夫(あらかわじゅうだゆう)
討ち入りと四十七士切腹の後日談として語り継がれる感動的な人情物語。堀部安兵衛の切腹の際に介錯人をつとめた下級武士・荒川十太夫のある行動と、その後の人生が描かれます。
浪曲では「誉れの三百石」という演目で披露されています。

▽中村仲蔵(なかむらなかぞう)
家柄のない歌舞伎役者・初代中村仲蔵が下回りから這い上がり、「仮名手本忠臣蔵」の斧定九朗(おのさだくろう)役で、苦悩の末に大当たりをとり、スター街道を歩むようになるまでの物語。「忠臣蔵」は、数々の名人が熱をこめて演じてきたことで、今に語り継がれていることを感じさせられます。落語・講談・浪曲で披露されています。

▽淀五郎(よどごろう)
「仮名手本忠臣蔵」の判官役(浅野内匠頭に相当)に抜擢された沢村淀五郎が、役を演じられずに苦しみ、大看板となった中村仲蔵に教えを乞います。「中村仲蔵」と同じく、「忠臣蔵」を支えてきた名優の心意気が感じられます。落語のみにある演目で、6代目三遊亭円生が圧巻です。

▼そのほかにも
▽書籍「七つの忠臣蔵」池波正太郎・吉川英治・山本一力・柴田錬三郎・海音寺潮五郎・菊池寛・佐江衆一
大御所たちによる忠臣蔵短編7作品を収録。「忠臣蔵」とは、創作のモチーフがそれこそ「蔵」の中にあふれるように詰まっているものだと、改めて感じます。

▽DVD「浪曲絶唱ストーリー」
笠間出身の現役最高齢曲師・玉川祐子さんと愛弟子・港家小そめさんのドキュメント映画。あこがれて弟子入りした師匠がなくなり、祐子さんに引き取られ、独り立ちしていく小そめさんの芸に対する姿が、涙を誘います。

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