くらし [特集]森林の恵み(2)

◆常陸大宮市の林業を支える人々
◇先祖が守ってきた宝物を未来につなげたい
常陸大宮市森林組合
代表理事組合長
(茨城県森林組合連合会 代表理事会長)
川野 和彦さん

・高祖父の代から受け継ぐ森林と整備の考え
平成29年から現在まで、市森林組合の要職を務められてきた川野組合長。川野家は、高祖父の代から林業に携わり、先祖が残した森林と「100年の長計は山林を営むにあり」という森林整備の考え方を受け継いできました。その考えをもとに大切にしてきた森林は「ふるさと文化財の森」に設定されています。川野組合長は「文化財の修繕には150〜200年生の木が使われるが、そのような木はなかなかないので、少なくとも50年経てば使うことのできる100年生ほどの森林が文化財の森に設定されました」と話します。

・森林は60年以上育ってようやく一人前
森林組合では、組合員の持つ森林を伐(き)って、使って、植えて、育てるという循環を大切にしています。
「植樹から10年目くらいまでは、周りの草丈より苗の樹高が低いので、成長のための草刈りが大切になってきます。15年から20年経つと、枯損木、病木、雪折れ木などを伐る「除伐」、30年以上に経ったころには「間伐」を行います。「除伐」も「間伐」も、残される木々に成長をもたらすため行います。こうした作業を繰り返し60年以上経った木々が建築材になります」と川野組合長は教えてくれました。

・人材確保に力を入れて期待に応えていきたい
森林の機能を発揮させるためには、森林がさらに発展することが重要となってきており、そのために、今後、森林組合では就業者を増やすことに力を入れていきたいといいます。「私たちの生きる時代で森林を途絶えさせたくないと考えています。また、カーボンニュートラルの推進や、『森林環境税』という制度ができたことからも、林業に対して皆さんから期待がかけられていると感じています。その期待に応えるためにも林業に携わる者として責任を果たしていきたいです」と川野組合長は話してくれました。

◇林業が盛んなこの地から木材の価値を伝えていきたい
茨城県木材共同組合連合会
会長
野上 満正さん

・行き届いた管理が高品質な木材を生み出す
常陸大宮市産の木材は「八溝材」の名で業界では知られており、強度の高さと木肌の美しさが特徴的な木材です。この高い品質は、ていねいな森林管理によって生み出されているといいます。「昔からの適切な管理が今も続いているおかげで、良い木材が採れる産地になっています」と野上会長。
市産木材の約8割は建築材の需要が多い首都圏を中心に県外へ出荷されているそうで、「常陸大宮市の木材は、スギもヒノキも両方良いと全国各地の木材を使う方から声をいただくんです」と野上会長は話します。

・原料と技術が集まった「恵まれた場所」
常陸大宮市は、森林組合などの原料供給者、複数の製材所、木材小売店が1つの地域にまとまっています。また、宮の郷工業団地には、製材所などが共同で設立した大きな木材乾燥施設があり、原料調達から木材出荷までを近い距離で行うことができます。このように林業を行う環境が整っているのは、全国屈指の「恵まれた場所」だといいます。「常陸大宮市は全国でも有数の木材を一度に大量出荷できる地域です。距離が近いのもあり、原料供給者と製材者が互いに信頼し合っています」と野上会長は話します。

・木材への親近感や価値を高めたい
今後は、若い世代を中心に親近感を持ってもらえるような取組を行っていきたいと野上会長。その一環として、令和6年には、市内の保育所などに「木育」の絵本の寄贈を行いました。「現代は、木に触れる機会が減ってきているので、接点を作って、木のポテンシャルを伝えていきたいです」と野上会長は話します。
さらに、林業を何十年にもわたって続けられるようなビジネスにするため、そして、地元の山林を維持していくため、自分たちでもっと木材の価値を高めていきたいとも話してくれました。