- 発行日 :
- 自治体名 : 茨城県かすみがうら市
- 広報紙名 : 広報かすみがうら No242 2025年5月号
■西蔵院(さいぞういん)地蔵堂について
今回の記事は、加茂にお住まいの市民学芸員松葉薫さんから提供していただいた資料と、西蔵院地蔵堂の管理者松澤光一さん立ち合いのもと実施した調査結果をまとめたものです。
加茂地区には西蔵院地蔵堂があり、安産子育てにご利益のあるお地蔵さまとして知られています。西蔵院地蔵堂の由来を記した昭和2年(1927)の資料が、地元に伝わっています。この資料には、「康平(こうへい)五年(1062)源義家東征ノ砌(みぎ)リ豪族加茂孫四郎ノ家ニ泊リ偶々(たまたま)孫四郎ノ妻難産ニ際会ス従者中ニ安産子育子安地蔵尊ノ画像ヲ所持スル者アリ之レヲ安置スルニ忽(たちま)チ安産ス依テ之レヲ乞フテ祈願寺西蔵院ニ安置ストアリ(中略)遠近ヨリ参詣者絶ヘザル為メ正徳ニ年(1712)六月廿四日(中略)西蔵院境内ニ仏堂ヲ建テ之レヲ安置シ年々護摩修行シ来リタルモノナリ」と記されています。「加茂孫四郎」は小田氏八代の小田孝朝(たかとも)〔1337-1414〕の子で、加茂に居を構えた人物です。この人物が登場し、その祈願寺が西蔵院であったという記述は大変興味深いものです。
地蔵堂内部には美しい彩色の木造地蔵菩薩立像が安置されており、柔らかな表情を浮かべています。台座には明治38年(1905)と昭和49年(1974)に修理が行われたことが記されており、非常に大切にされてきた尊像であるということが分かります。また、お地蔵さまが安置される厨子には、正徳2年銘の棟札が残されており、こちらも貴重な歴史遺産となっています。
西蔵院地蔵堂では現在でも護摩供養が続けられており、近郷近在の方々の信仰を集めています。優しい表情のお地蔵さまは、今日も子供たちの健やかな成長を見守ってくれているのです。
問合せ:歴史博物館
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