くらし [特集]水資源を未来へつなぐ~霞ヶ浦導水(1)

サイクリングや釣りのスポットとして知られ、多くの人が訪れる霞ケ浦。
ワカサギをはじめとした川魚の漁場であり、湖岸沿いに広がる蓮田や5月と7月にはダイヤモンド筑波が鑑賞できる、小美玉市の貴重な地域資源のひとつです。
今回の特集では、恵みの湖である霞ケ浦を活かして、貴重な水資源を未来につなげる霞ケ浦導水事業を紹介します。

■霞ケ浦導水事業とは?
◆霞ケ浦、那珂川、利根川を結び水のネットワークを形成する
霞ケ浦導水事業は、那珂川、利根川、霞ケ浦をトンネルでつなぎ、広域的な水のネットワークを形成する事業として1984年に開始しました。降水量が多いにも関わらず、渇水も多いのが日本の水資源の特徴で、首都圏の渇水被害の最小化や社会経済活動の発展、霞ケ浦や桜川・千波湖の水質改善などを目的としています。

○霞ケ浦導水事業の目的
水質浄化…霞ケ浦と桜川などの水質を浄化
水不足の軽減…お互いの水を行き来させることで那珂川と利根川の水不足を解消
新規都市用水の供給の確保…茨城県、東京都、千葉県、印旛郡市広域市町村圏事務組合の水道用水、工業用水の安定的な供給の確保

◆ダムではないけど……実はダム事業
霞ケ浦導水事業は、流況(りゅうきょう)(流量の季節的特性)が異なる二つ以上の河川を水路で結ぶ、流況調整河川を整備する事業で、国内では3例目です。時期に応じて、流量に余裕のある河川から不足している河川に水を送り合うことで、それぞれの河川の流況を改善し、河川の必要流量の確保、水の有効活用を行います。河川の流況を調整することで、新規の水源開発、不特定用水の補給を行う事業のため、ダム事業(河川総合開発事業)のカテゴリーに位置づけられています。

○流況調整河川の仕組み
本紙をご参照ください

◆河川をつなぐ二つのトンネル 那珂導水路・利根導水路
霞ケ浦導水事業は那珂導水路と利根導水路の二つの水路の工事を行います。那珂導水路は、那珂川と桜川を結ぶ水戸トンネルがすでに完成しています。現在、水戸立坑から第2機場を結ぶ石岡トンネルの工事が、小美玉市内の玉里立坑、美野里立坑、堅倉立坑で行われています。

■潜入、小美玉の地下40mへ
堅倉地区にある霞ケ浦導水石岡トンネルの堅倉立坑。
今回は大学生3人を連れた特別取材チームで立坑内部を見学取材しました。
飯村旺我(いいむらおうが)さん(茨城大学2年)
黒澤香音(くろさわかのん)さん(常磐大学3年)

1 霞ケ浦導水事業の目的を知る!
工事を請け負う錢高(ぜにたか)組の末次(すえつぐ)祐貴(ゆうき)さんの案内で見学スタート。最初に霞ケ浦導水の目的や現在どこまでトンネルが進んでいるかなど、石岡トンネル全体の工事状況をレクチャー。
シールド工法によりどのようにトンネルが作られているかを学びました。
「いざ!堅倉立坑内部へ!」

2 目の前には直径20.5mの竪穴が!
施設内部に入ると大きな竪穴が目の前に。上からのぞくとその高さに驚きました。竪穴の周辺には、トンネルの壁になるセグメントと呼ばれる材料が並び、見学中も大型トレーラーで納品されていました。
「専用エレベーターで竪穴の中へ!」

3 トンネルの先端までは歩いて約1時間!
竪穴の中には、作業員や材料を運搬する台車があり、現在の作業場所には徒歩で約1時間、台車では約20分かかるそう。トンネルの反対側には茨城町からのトンネルとの接合部分も。工事は3交代制で24時間休まず続けられ、6月には目的地の美野里立坑に到達予定。
「トンネル内部へレッツゴー!」

4 トンネル内部は神秘的な空間!
トンネルの中には、台車を運搬するレールが敷かれ、掘削の際に出る泥や土を運搬するパイプがあります。トンネル内は明るく、作業用通路を100m地点まで進むと、子どもたちの描いた絵が目印として飾られていました。

◆霞ケ浦導水事業堅倉立坑の見学を終えて
田所美来(たどころみく)さん(筑波大学4年)
竪穴内部に広がる作業所やトンネルの中に入った時、そのスケールの大きさと空気が冷たくなっていくところが遊園地のアトラクションのようでワクワクしました。丁寧に設備について説明してくれたので、目の前で何が行われているのか理解しやすかったです。地域の子どもたちの絵やシールドマシンの先端が市の花であるコスモスのピンク色に染めてあるなど、地域とのつながりを大切にしていることがわかり、導水事業に親近感が湧きました。

トンネル見学後は、外にある施設も見学。掘削で排出された泥水を再利用するプラントなども説明してくれました。
シールドマシンを管理する中央機械室。さまざまなモニターでシールドマシンの方向や進捗状況をチェック。