文化 平和への想いを繋ぐ

8月は平和月間です。昭和20(1945)年の終戦から、今年で80年の節目の年を迎えます。先の大戦は死者や負傷者など直接の被害だけではなく、人々の心にも大きな傷を残しました。
日本では、戦争体験者が年々少なくなっています。明るい未来を築いていくために「戦争」の悲惨さや「平和」の尊さを次の世代へ語り継いでいくことが必要です。

・行田市英霊塔
戦没者を祀(まつ)るため、水城公園東側園地に建立されたもので、本市の戦没者の名前が記されています。

■戦時下の行田
◇学校と子どもたち
軍国主義の下、昭和16(1941)年に尋常(高等)小学校は国民学校に名称が変更され、児童たちを「皇国民」として育て上げる、戦時色の強い学校へと変わりました。

・太田東国民学校日誌
戦時下の特徴的な行事として、出征兵士の見送り、兵士の追悼、勤労奉仕、軍人援護強化運動などが記されています。(郷土博物館所蔵)

◇耐え忍ぶ生活
昭和12(1937)年に日中戦争が始まり、徐々に戦争は激化しました。翌年には国家総動員法が施行され、戦後の暮らしは悪化し、国内の食糧や資材が不足していきました。食糧の増産、供出、配給制、金属回収など耐え忍ぶ生活が続きました。

・防空頭巾
軍需物資の調達が最優先となり、食糧や物資などが不足していたため、服の端切れを再利用して作られました。(郷土博物館所蔵)

◇戦地へ赴く人に
徴兵制度で満20歳に達した男子は、戦地へ赴きました。戦地へ赴く際には、出征幟、寄せ書きの日の丸、千人針、千人力などが作製されました。そして、街を挙げた盛大な壮行会が行われ、戦地へと送り出されました。
行田から出征した兵士のうち1,506人が亡くなっています。

◇空襲の被害
昭和20(1945)年2月の空襲の被害は死者10人、家屋4軒、8月の空襲の被害は死者8人、負傷者5人、家屋33軒でした。

■戦争体験者インタビュー
髙城三郎さん(96歳・矢場)
私は昭和4(1929)年、旧忍町の忍城址に近い所で生まれました。昭和初期の日本は戦争への道を進んでいた時代でした。皇民化教育、軍国主義の教育を受けて育ち、昭和16(1941)年に埼玉県立熊谷中学校(現熊谷高等学校)に入学しました。
戦局が不利となりつつあった昭和19(1944)年11月、私たち学生は勤労動員のため各地の軍需工場などで働くことになりました。私は富士電機吹上工場に配属され、電波探知機の回転台を組み立てる作業に従事しました。しかし、翌年には大中都市が焼夷弾で焼き尽くされ、爆撃機が行田の空を乱舞するまでになりました。そして8月14日の深夜、爆撃機は我が家の上空にも飛来しました。翌日の正午「玉音放送」を聞いた私は思いもよらぬ敗戦のショックにぼうぜん自失するほかありませんでした。戦争の辛さは戦争中だけではありません。自分も含めて今までの皇民化教育、軍国主義の教育を受けてきた人たちは考えを180度変えることが求められました。私たちの世代は誰も同じような葛藤や悩みを持って生きてきたと思います。私の場合は友人や先生、家族とよく話し合い、いろいろな価値観を知ることで、徐々に挫折から立ち直っていったように思います。
今報道を見ていても戦争など自分には起きないという感覚がどこかにあると思います。しかし、戦争は些細な理由で始まり、一度始まるとなかなか終わりません。戦争は憎しみを育て、差別を助長します。「どんなことがあっても戦争をしてはいけない」。この思いは戦争を経験していない世代とはかなり違うと思います。私たちは自由と平和がどんなに尊いか、身をもって実感した最後の世代になるでしょう。
終戦から80年を経た今、軍国主義の戦争時代と平和な戦後という2つの時代を生きたことは貴重な体験だったと思います。自分が体験した戦争時代の真実を語り継ぐことで、真実を見つめる確かな目を養う参考になったら嬉しく思います。

■今の私たちにできること
◆戦争の記憶を残す
◇あなたの記憶を募集
本市では、戦争の記憶を風化させないため、戦争体験談や戦時中の写真をまとめた冊子をこれまでに2冊発行しています。戦後80年に当たり、今年度に3冊目の発行を予定しています。
地域活動推進課では語り部登録者や戦時中の状況を伝える写真、物品などを随時募集しています。

◆行田市平和都市宣言
今や恒久平和への願いが世界的うねりとなっている。
唯一の原爆被爆国であるわが国は、いまこそ地球家族の一員として世界的潮流に歩調を合わせ、世界の恒久平和が確立されることを強く願い、さらなる平和運動を展開すべきである。
私たち行田市民は、だれもが安穏に暮らせる「平和と希望の二十一世紀」を築くために市民一人ひとりが努力することを誓い、この誓いを次代に引き継ぐためにここに平和都市を宣言する。
平成3年3月20日

◆戦争の時代を知る
◇平和展を開催
平和への願いを込め、戦争の悲惨さを物語る貴重な戦争時の資料を展示する平和展を開催します。
・第1会場
日時:8月7日(木)~19日(火)午前9時~午後9時30分
※12日(火)・13日(水)を除く
場所:コミュニティセンターみずしろ1階ギャラリー
・第2会場
日時:8月4日(月)~18日(月)
場所:行田市役所正面玄関ロビー

■戦後80年 第35回テーマ展 戦時下の行田
郷土博物館では、戦争の悲惨さと平和の尊さを考え、それらを未来へ語り継いでいくため、これまでに寄贈された戦争に関わる資料や写真など165点を展示する『戦後80年 第35回テーマ展 戦時下の行田』を開催しています。
開催期間:8月31日(日)まで
開催時間:午前9時~午後4時30分
※最終入館は午後4時まで
開催期間中の休館日:8月4日(月)・18日(月)・25日(月)
入館料:大人 200円、大学生・高校生 100円、小・中学生 50円
※団体割引あり

問い合わせ:
地域活動推進課【電話】内線253
戦時下の行田については…郷土博物館【電話】554-5911