- 発行日 :
- 自治体名 : 埼玉県東松山市
- 広報紙名 : 広報ひがしまつやま 2025年4月号No.1146
■慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん)の原因と治療
呼吸器内科医師 朱宰弘(しゅさいこう)
慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは、従来、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称です。タバコの煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露(ばくろ)することで生じた肺の炎症性疾患であり、喫煙習慣を背景に中高年に発症する生活習慣病といえます。最大の原因は喫煙であり、喫煙者の15~20%がCOPDを発症します。タバコの煙が気管支や肺胞に炎症を引き起こし、空気の流れが低下することで症状が表れます。
特徴的な症状としては、労作時呼吸困難(運動をした際の息切れ)や慢性の咳(せき)、痰(たん)などが挙げられますが、喘鳴(ぜんめい)(呼吸をするときにヒューヒュー、ゼーゼーなどと音がする)や発作性呼吸困難(急に発症する呼吸困難、息切れ)などの喘息(ぜんそく)のような症状を合併する場合もあります。長期の喫煙歴と慢性の咳、痰、労作時呼吸困難があればCOPDが疑われます。呼吸機能検査等を実施して、確定診断を行います。
呼吸機能検査では、最大努力で吐ける全体量とその時に最初の1秒間で吐ける量を測定し、その比率が気道の狭くなっている状態(閉塞性障害)の目安となります。重症例では、胸部エックス線検査でも肺の機能低下や過膨脹などの所見を発見できることもあります。また高分解能CTでは肺胞の破壊が検出され、より早期の気腫病変(肺胞が過拡張した状態)も発見できます。
COPDに対する管理・治療の目標は、(1)症状及び生活の質の改善、(2)運動能と身体活動性の向上及び維持、(3)症状の悪化の予防、(4)疾患の進行抑制、(5)全身併存症及び肺合併症の予防と治療、(6)生命予後の改善にあります。治療の基本は禁煙であり、薬物療法として気管支拡張薬や吸入ステロイド薬が使用されます。症状の悪化の防止として種々のワクチン接種も推奨します。非薬物療法では呼吸リハビリテーションや在宅酸素療法が行われます。
長期の喫煙習慣があり、気になる症状のある人は、呼吸器内科を受診することをお勧めします。