くらし 特集 祝ムジナモ野生復帰‼

■埼玉県レッドリストカテゴリー

13年ぶりの改訂で「野生絶滅」から「絶滅危惧IA類」に変更されました!

1月7日(火)、県内で絶滅のおそれがある動植物をまとめた「埼玉県レッドリスト2024植物編」の改訂が発表され、「野生絶滅」に分類されていた食虫植物ムジナモが、「絶滅危惧IA類」になり、野生復帰を果たしました。一度野生絶滅となった種が復活することは全国的に極めてまれで、県内では初の事例となります。

◇ムジナモってどんな植物?
モウセンゴケ科の水草で、根を持たず水面に浮遊し、水中のプランクトンを捕食する食虫植物です。長さは5~25センチで、春になると水面に浮上し、夏にかけて成長・増殖。冬になると水底に沈んで越冬する多年草です。夏場にまれに米粒大の白い花を咲かせます。

◇どこに生息しているの?
ムジナモは三田ケ谷の宝蔵寺沼に自生しています。宝蔵寺沼は国内唯一のムジナモの自生地で、国の天然記念物に指定されています。「掘上げ田」と呼ばれる特徴的な田んぼの形が今も残り、堀(水路)が迷路のように入り組んでいます。現在、環境整備が進み、多様な動植物が生息しています。

■60年にわたる復活までの軌跡
昭和36年
・前身の「羽生市むじなも保存会」が発足。
~会員が自宅でムジナモの栽培を開始。栽培・増殖の技術が確立される~
昭和41年
・ムジナモ自生地「宝蔵寺沼」が国指定天然記念物となる。
・台風14号の大雨で、ムジナモが宝蔵寺沼から流出。
~宝蔵寺沼自生地内のムジナモが消滅~
昭和43年
・市が宝蔵寺沼の自生区域を公有地化。以降管理を継続。
・県教育委員会による緊急調査。
・市教育委員会、埼玉大学による緊急調査。
・埼玉大学研究室で栽培・研究が開始。
昭和60年
・宝蔵寺沼の試験池に初めてムジナモを100株放流するも、年間を通じた生育は確認されず。
県レッドリスト1998「野生絶滅」
県レッドリスト2005「野生絶滅」
平成21年
・市教育委員会・埼玉大学が緊急調査。宝蔵寺沼へのムジナモ放流・環境整備を本格化する。
ムジナモだけを増やそうとしてもうまくいかない…
多様な生物がバランスよく生息できる環境づくりが重要!
平成23年
・自然増殖した100株を確認
県レッドリスト2011「野生絶滅」
平成28年
・10万株に自然増殖
令和4年
・100万株に自然増殖
令和7年1月
・野生復帰
県レッドリスト2024「絶滅危惧IA類」

◇羽生市ムジナモ保存会
昭和58年に前身の会を経て再結成され、現在、市内外の会員約130名で構成されてます。自宅でのムジナモ栽培や月に1度の自生地観察会、一般の方を募集しての見学会など精力的に活動しています。

◇子どもたちによる放流活動
羽生市ムジナモ保存会会長野中孝一さん
三田ケ谷小では昭和58年から保存会の指導のもと、6年生を対象にムジナモの勉強会や放流活動が行われています。ムジナモを愛する心は、世代を超え受け継がれています。令和6年度は井泉小・村君小と3校合同で実施しました。

■自生地をムジナモが住みやすい環境に
羽生市ムジナモ保存会会長 野中孝一さん

幼い頃、宝蔵寺沼では掘上げ田で稲作が行われ、引き舟に乗り稲を運搬していた父の姿が今も思い出されます。保存会に入会し40年間、先輩方と「ムジナモを絶対になくさない」という強い思いで、自生地の環境保全に取り組んでまいりました。試行錯誤の日々でしたが、ただムジナモの数を増やすのではなく、ムジナモが住みやすい環境を作ることが大事だと気づいてからは、数が順調に増えていきました。今回、60年にもわたる歴代会員の長く地道な活動が実を結び感無量です。自生地は普段は立入禁止ですが、夏に一般の方向けに見学会を開催していますので、水面一面に繁茂する元気なムジナモの姿をぜひ見に来てください。

■有識者からのコメント
神戸大学名誉教授、環境省絶滅のおそれのある野生生物の選定・評価検討会維管束植物分科会 座長 角野康郎さん

今回のムジナモの野生復帰は、野生絶滅(栽培下のみで生存)となっていた植物を自然に戻すことに成功した日本初の例になります。種を守ることの第一歩は環境を守ることです。今回の取り組みでは、その生育にふさわしい環境を明らかにし、かつて羽生市に自生していたムジナモを用いて自生状態を蘇らせたことが高く評価されます。しかし、これがゴールではありません。これからも保全の取り組みが続くことを期待します。

問合せ:市郷土資料館
【電話】562-4341