文化 青淵遺薫(せいえんいくん) 栄一のちょっと小話(こばなし)

『渋沢家のお正月』渋沢栄一の数少ない趣味に『詩作(しさく)』と『書』があります。栄一は元旦に漢詩を作り、それを揮毫(きごう)してみんなに披露することをよく行いました。栄一は、書く時の心地について「ほかのことは何も頭に浮かばなくて無心になるのが大変愉快である」と語っています。また、家族の前で渋沢家の家法・家訓を栄一自ら唱えることも正月の習わしとしていました。そうした合間にも来客はたくさんあり、正月でさえ栄一や家族は忙しく過ごしていた様子がうかがえます。
郊外に別荘を持たなかった渋沢家は、正月に箱根(はこね)や大磯(おおいそ)などの温泉で静養することもありました。しかし、そこへも来客があり、静養といっても忙(せわ)しなかったようです。あるときの正月には、近代落語の祖そといわれる三遊亭円朝(さんゆうていえんちょう)を伴って徳川慶喜(とくがわよしのぶ)のいる静岡へ出かけ、慶喜に落語を楽しんでもらったという話もあります。
正月に一家団欒(いっかだんらん)して、かるたなどを楽しんだという記録はありませんが、このようなエピソードがあります。息子の秀雄(ひでお)が学生の時に、友達とトランプで遊んでいるところへ栄一が帰ってきて、最初は見ているだけでしたが、途中からゲームに参加した栄一は、初心者なのにやたら強く、次第に熱を帯び、とうとう徹夜になったそうです。そんな栄一ですから、正月にかるたなどで、こどもたちと真剣勝負をしていたかもしれません。

◎道の駅などで販売している『栄一翁かるた』。ぜひ手に取ってみてください。