文化 郷土を知り、郷土を愛する「志木市 歴史さんぽ」-執筆・協力 志木のまち案内人の会-

■第56回 田子山富士塚シリーズ➁
「親子の唐獅子(からじし)や親子の猿がいるのはナゼ?」
古事記や日本書紀に「天孫降臨(てんそんこうりん)」のお話があります。天照大神(あまてらすおおみかみ)の孫である瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が高千穂の峰に降りてくるお話です。降りてきた瓊瓊杵尊はきれいなお姫様(木花開耶姫(このはなさくやひめ))を見つけてすぐにプロポーズします。姫は「私はお答えできません。父(大山祇大神(おおやまつみのおおかみ))に聞いてください。」と答えます。父は「この子の姉(磐長姫(いわながひめ))と二人いっしょに結婚してください」と答えました。
磐長姫は岩のように丈夫で長生きする人でしたが、お岩さんのような容姿をしていたので、瓊瓊杵尊は磐長姫とは結婚しないと言って帰してしまいました。
瓊瓊杵尊と結婚した木花開耶姫は、たちまち赤ちゃんを宿しましたが、瓊瓊杵尊は、宿した子は自分の子ではないのではないかと疑います。疑われた木花開耶姫は身の潔白を示すため「宿した赤ちゃんは神様の子なのだから、どんな悪条件の中でも無事に生まれてくるはず」と信じ、産屋(うぶや)に火をつけて、火の中で無事に三つ子の赤ちゃんを出産したそうです。このことから木花開耶姫は「安産子育ての神様」や「火除けの神様」といわれるようになりました。
このお話にちなんで、田子山富士塚の入口階段の左右にある「唐獅子」や登山口の木戸の横の「猿」が親子連れになっているのだと考えられています。
猿は「富士山の神様のお使い」といわれ、木花開耶姫命(このはなさくやひめのみこと)は田子山富士浅間神社に祀(まつ)られている神様です。背景となる神話を思い出しながら、現地をご覧いただき、お楽しみください。