文化 ≪特集≫ようこそ福岡河岸記念館へ

およそ300年もの間、江戸と川越を結ぶ水路として重要な役割を果たした新河岸川。回漕問屋「福田屋」の歴史を通して、舟運と郷土の歴史を福岡河岸記念館でたどってみませんか。

江戸時代後半から明治時代中期にかけて栄えた福岡河岸の3軒の回漕問屋。そのうちの一つである福田屋(旧星野家)の土地・建物を市に寄付いただき、明治時代中頃の船問屋を再現しています。
郷土の歴史と地域の文化について理解を深めていただくため、平成8(1996)年11月3日、福岡河岸記念館として開館し、主屋・離れ・文庫蔵・塀・石垣は、県が指定する景観重要建造物に初めて指定されました。

◆福岡河岸の歴史
福岡河岸は、対岸の古市場河岸の繁栄を背景に、享保18(1733)年頃から、福岡村の人々が農業のかたわら回漕業を営んだのが始まりといわれています。その後、江戸屋・吉野屋・福田屋の3軒の問屋が江戸幕府から公認され、福岡河岸での舟運が本格化しました。新河岸川は、「九十九曲りゃ あだでは越せぬ 通い船路の 三十里」と舟唄に歌われるほど曲がりくねっており、ゆっくりとした流れで水量を保ち、舟運に適していました。
この頃の船問屋は、船で荷物を運ぶ回漕業の他、農家に肥料を売って、その代価として農産物を受け取り、江戸に回漕する仲買商も兼ねていました。次第に取り扱う荷物の種類、数量ともに増加し、客旅輸送を主とした早船(はやふね)と呼ばれる船も登場し、江戸末期には舟運の最盛期を迎えます。
明治期に入ると、対岸の古市場河岸とともにひとつの街並みを形成し、道の両脇には足袋屋・鍛冶屋・桶屋などの職人の他、荒物屋やうどん屋など、近隣農村に住む人々相手の店が軒を連ね、両河岸一体となった街並みがにぎわいをみせました。
明治28(1895)年、国分寺・川越間を結ぶ川越鉄道(現西武国分寺線と新宿線の一部)が開通すると、船問屋は回漕業を縮小し、次第に肥料や酒・荒物などの小売業に移行しました。その後、明治末年には、福田屋・江戸屋は回漕業をやめ、吉野屋だけが大正末年まで船問屋として営業を続けました。
大正3(1914)年には池袋―川越間を結ぶ東上鉄道(現東武東上線)が開通し、明治43(1910)年の大水害を契機として大正10(1921)年から新河岸川改修工事が始まりました。その後、昭和6(1931)年の通船停止令によって事実上舟運の時代は幕を閉じました。

◆主屋
主屋の正面入口は、片引きの格子戸・障子附の引き違い板戸・揚げ戸の三重の建具で閉ざし、商家の厳重さを伝えています。
1階は、帳場と金庫部屋の他、その背後に生活空間としての部屋をもうけ、居住空間として使っていた2階は、移動可能な箱階段でつながっています。
また、2階には男部屋、女部屋と呼ばれる部屋があり、雇用人の住生活を解明する貴重な空間となっています。

◆離れ
離れは、明治期の木造3階建てとしては、住居として現存する県内唯一の建造物です。
1階には豪華なトイレと、かつては浴室が備え付けてあり、接客のために利用されていました。各階の床の間には唐三銘木(黒檀・紫檀・タガヤサン)が使われ、障子の桟も、欄間の透かし彫りも各階で一見同じように見えながら微妙に細工を変えてあるという凝ったつくりをしています。

◆石垣
石垣は「空石積(からいしづ)み」と呼ばれる工法で、コンクリートやモルタルといった接着剤を使わず、石を隙間なく敷き詰めて強度を保つという、いにしえの高度な技術を垣間見ることができます。約5mの石垣の上に立つ3階建ての離れは天守閣のようです。

◆文庫蔵
商売で使った大福帳などの帳簿類を保管していた文庫蔵の中は、常設の展示室として、船問屋のなりわいや、十代目星野仙蔵関連の使用品、剣道家としても名をなした仙蔵と剣道場「明信館」などの関係資料を展示しています。

◆周辺
福岡河岸記念館周辺には、新河岸川の船着場や、茂兵衛地蔵、季節の花が彩る遊歩道などがあります。徒歩20分程離れた場所にある上福岡歴史民俗資料館でも舟運の常設展示を行っています。散策してお気に入りスポットを見つけてみてはいかがでしょうか。

◆イベント
福岡河岸記念館では、館内を活用して音楽や落語、機織りなどのイベントを開催しています。趣ある建物でのイベントをお楽しみください。市報16ページで機織りの案内をしています。

▽福岡河岸記念館特別公開(年12回)
普段は見られない「離れ」の2階と3階を特別公開します。館内を説明しながら案内するガイドを希望する場合は、事前にお問い合わせください。
福岡河岸祭り(8月23日(土))とタイアップする日は、午後8時まで開館するため、「離れ」から光が漏れる夜の河岸記念館を見学できます。
特別公開日程:7月12日(土)、8月23日(土)、9月13日(土)、10月11日(土)、11月1日(土)、12月13日(土)、3月14日(土)・28日(土)

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福岡河岸記念館

開館時間:午前10時~午後4時30分
※10~4月は午後4時まで。
休館日:月曜日(祝日にあたるときも休館)
入館料:
・大人…100円(20人以上の団体は1人80円)
・小・中学生、高校生…50円
※特別公開日は高校生以下無料。
※入館は閉館30分前まで。

≪アクセス≫
・福岡3・4・2
・上福岡駅東口から西武バス「南古谷駅」行きで「城北埼玉中学・高等学校」下車徒歩3分、ふじみん号Aコース「川崎」下車徒歩3分
・専用駐車場普通車5台分

問合せ:上福岡歴史民俗資料館
(【電話】049・261・6065)