文化 大自然からの贈り物 天然記念物のヒミツ
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- 発行日 :
- 自治体名 : 埼玉県神川町
- 広報紙名 : 広報かみかわ 2025年4月号(第232号)
「文化財」という言葉を聞くと、多くの人は遺跡や古墳、埴輪、土器などの埋蔵文化財をイメージされると思います。
文化庁では、『日本の長い歴史の中で生まれ、育まれ、今日まで守り伝えられてきた貴重な国民の財産』を文化財と定義しています。文化財にはお寺や神社などの建物、絵画や文書、貴重な動植物など様々なものがあります。また、それら形の残るものだけでなく、お祭りなどの民俗行事や演劇、音楽など人が後世に伝えていくものもあります。過去と現在を繫ぎ、未来へと受け継いでいく役割を担う地域の宝こそが文化財なのです。
文化財にはいくつかの種類があります。下の図は文化庁が文化財の種類について分類した体系図です。
その中でも天然記念物は、
・日本列島の成り立ちを示す地質現象
・過去の生物の姿を知ることのできる化石
・日本列島の生物地理学的な特性を示す固有種などの動植物
などが指定されており、日本列島がたどってきた「自然史」としての意義を持っています。
さらに、人々が関わりながら作り上げてきた自然環境も天然記念物に含まれます。例えば、ホタルなど日本人の自然観の形成に寄与したものや、並木、家畜など人と自然の関わりが生んだものは、私たちと自然とのつながりを示す「文化史」としても重要な意味を持っています。
◆キミは出会えるか!? 神川の天然記念物たちに
学術上貴重でわたしたちの自然を記念するものとして天然記念物が指定され、その中でも特に重要なものは「特別天然記念物」になります。埼玉県には特別天然記念物が3件あり、そのうちの1件がなんと神川町にあります。
◇No.0001 カモシカ
分類:特別天然記念物(昭和30年指定)
レア度:★★★★★
属性:動物
生息地:山地丘陵地帯(地域を定めず)
カモシカは日本のみに生息する日本で唯一の野生のウシ科動物。
町内では上阿久原・下阿久原・矢納地内で多く目撃されている。近年では山から降り、人家がある場所まできていて、渡瀬地内(渡瀬駐在所付近)で県道を渡る様子が確認されている。
◇No.0002 三波石峡
分類:国指定名勝・天然記念物(昭和32年指定)
レア度:★★★
属性:地質鉱物
所在地:矢納
三波石と言われる岩石帯が神流川の流れによって浸食されてできた峡谷。一帯には大小さまざまな形の岩が点在している。この岩は黄緑や白色などを織り交ぜたもので、三波石と呼ばれる。地質学上では「三波川結晶片岩」と命名され、日本の変成岩研究の出発点となっている。
峡谷に点在する巨岩・奇岩は「三波石四十八石」と言われ「一番石」から48番まで名前が付けられている。
◇No.0003 御嶽の鏡岩
分類:特別天然記念物(昭和31年指定)
レア度:★★★★★
属性:地質鉱物
所在地:御嶽山中腹
約1億年前に関東平野と山地の境にできた活断層のすべり面で、摩擦によって表面が鏡のように磨かれている。岩面の大きさは、高さ約4メートル、幅約9メートル、約30度の傾斜がある。岩質は赤鉄石英片岩で、岩面の大きさや、断層の方向がわかることから地質学的に貴重である。
鏡岩は古くから人々に知られ、江戸時代に記された『遊歴雑記(ゆうれきざっき)』には、鏡岩に向えば「人影顔面の皺(しわ)まで明細にうつりて、恰(あたか)も姿見の明鏡にむかふがごとし」と記述がある。鏡のように物の姿を映すということから、鏡岩と呼ばれるようになった。
◇No.0004 夫婦梅
分類:県指定天然記念物(平成13年指定)
レア度:★★
属性:植物
所在地:新宿(無量院石重寺)
夫婦梅は、その名の通り八重咲きの花二つが並んで咲き実を結ぶ貴重な品種であることから、昭和14年に埼玉県の天然記念物に指定された。推定樹齢約400年といわれ、高さ約11m、根周り2.4mもあった。しかし平成元年に枯死。平成13年に指定が解除された。現在は、貴重な品種である夫婦梅の性質を引き継いでいる二世が県指定天然記念物に指定されている。
夫婦梅の開花時期は他の梅よりも1か月ほど早く、1~2月頃には優美な花を咲かせる。
◆失われてしまった天然記念物
天然記念物は、周辺環境の変化や寿命などにより失われてしまうものがあります。町内にも以前は国
や県に指定されていましたが、解除となってしまったものがあります。
◇No.0000 神流川渓谷のムカデラン自生北限地
ムカデランはラン科の多年草。関東地方以西の暖かい場所の樹皮や岩面に着生する。自生地は少なく群生することは稀である。6~7月頃に淡紅色の小さな花を咲かせる。多数並列する葉をムカデの足に例えて、「ムカデラン」と呼ばれている。
かつては本州の自生北限地として神泉村矢納と群馬県鬼石町保美濃山(藤岡市)が国の天然記念物に指定されていたが、下久保ダム建設によって水没し指定解除となった。
参考:秩父市てんぐ岩のムカデラン(秩父市教育委員会提供)
◇No.0000 水上(みずかみ)の大椋(おおむく)
「水上の大椋」として昭和16年に大字渡瀬地内にあった椋が指定されていたが、戦後に枯れ伐採された記録が残っている。記録では指定年月日と枯れてしまったことしか分からず、写真や指定の理由が不明となっている。
[WANTED]
「水上の大椋」についてご存知の方は文化財事務所まで情報提供をお願いします。
『文化財を守っていくために』
文化財は、一度失ってしまうと決して元に戻すことはできません。もしも失われてしまう文化財がある場合は、調査や記録を行い、未来へと伝えていく必要があります。そのためには地域の皆さんが文化財の存在を知り、町全体で守っていく意識を持つことが大切です。
町内の文化財について知りたいことやお気づきのことがありましたら教育委員会の文化財担当までお気軽にご連絡ください。また、多目的交流施設や中央公民館では町の文化財を展示しています。ご興味のある方はぜひお越しください。
問合せ:生涯学習課 文化財担当
【電話】0274-52-2586【FAX】0274-52-2586