- 発行日 :
- 自治体名 : 千葉県栄町
- 広報紙名 : 広報さかえ 令和7年4月号vol.871
■栄町に伝わるヘビの昔話「眼助大師」(二)
(前号のあらすじ…布鎌新田で役者を志す青年、七左衛門は、歌舞伎役者の市川団十郎へ弟子入りを懇願するため成田山へ来ています。)
それから何日か過ぎたある大雨の日のことでした。
その日もいつもと同じように土下座をして頭を下げている七左衛門を見た団十郎は、静かに声を掛けてくれました。「風邪をひきますよ。さあ私の後へ付いてきなさい」と。七左衛門は雨で濡れた体を左右に振りながら起き上がると、団十郎のあとを黙って付いていきました。
一つの部屋へ七左衛門を連れてきた団十郎は、優しく言い論しました。
「お前さんは農家に生まれ、立派な体を親から貰いながら、芝居役者になりたいなんて勿体ないと思うよ。役者などというのは、いい着物を着て踊ったり、芝居をしたりして、たいそう格好よく見えるけれども、並大抵の苦労じゃ舞台に出られるような役者には、なれるものではないのですよ。家に帰って親考行をした方がいいと思いますよ。でも、どんな苦労をしてでも役者になりたいというのなら、私も一肌脱いであげるから、今日のところは一旦家へ帰り、家族の人たちと相談して了解をいただいたら、明日またここへ来なさい。私の修業も明日で無事に終わりますからね」と。
七左衛門は、嬉しさのあまり、夢ではないかと頬をつねってみました。そして「私はどんな苦労にも負けずに頑張ることを誓います。明日は必ず親を説き伏せてきますから、どうか私を弟子にしてください」と言うと、七左衛門は喜び勇んで家へと走って帰りました。
(つづく)
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