- 発行日 :
- 自治体名 : 千葉県栄町
- 広報紙名 : 広報さかえ 令和7年5月号vol.872
■栄町に伝わるヘビの昔話「眼助大師」(三)
(前号のあらすじ…成田山で修業中の市川団十郎に、役者になることへの熱意を伝えられた七左衛門は、家族を説得するため布鎌の実家に帰ってきました。)
七左衛門は家族の人々に、成田山でのいきさつを話し、「私が役者になることを許して下さい」と頼みました。しかし、そんなに簡単に家族が承知するはずはありませんでした。父も母も大反対でした。祖母も反対でした。姉も妹も賛成をしてくれませんでした。ただ、一人祖父だけは、「まあ、そんなに役者になりでえと言うんならば、やらせてみたらどうだ。どうせ十日もしたら音をあげて帰ってくらあな。こんな男に役者が勤まる訳があるめえ」と賛成してくれたのです。そのため父母も仕方なく許してくれました。
さて、団十郎に入門を許されて、弟子にしていただいた七左衛門は、その日から一生懸命役者の修業に励みました。自分でやりたくて芝居稼業に入ったのですから、「好きこそ物の上手なれ」の諺にもあるように、他人が一つ覚えるまでには二つも三つも覚えてしまうのです。「こいつは立派な役者になれるかも知れない」と団十郎は思いました。そして七左衛門は眼が大変よかったので、芸名を限助と付けてくれました。
ある年のことです。団十郎一行は大阪での巡業のために、江戸を出発したのですが、ある村にさしかかった時に大嵐に合ってしまったのです。仕方がないので、その村の名主さんに頼んで、一晩泊めてもらうことになりました。すると、そこの名主さんが、なんと芝居が飯より好きというくらいですから、すっかり喜んでしまって、村の人々をみんな呼び集めてしまったのです。そして、ここで芝居をやって見せてくれと頼まれてしまったのです。(つづく)
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