健康 病気の豆知識

■手術室の過ごし方(高齢)
塩田記念病院 麻酔科部長 中村 京一

昭和38年;158人、昭和56年;1000人、平成10年;1万人、今年;約10万人。百寿者(センテナリアン)が急増しています。ちなみに95歳以上は95万人です。長寿はめでたく、尊敬の対象ですが、フレイル(加齢によって心身が老い衰えた状態)が進みます。認知症は65歳以上の15%、90歳以上の60%です。視力の低下、狭い視野、たどたどしい歩行。僅かな段差で転びます。そして、脆くなった骨は、簡単に折れてしまいます。当院でも、毎日の様に大腿や腕を骨折した御老人が搬送されます。
以前は、フレイルの患者さんには、手術を回避する傾向があったのですが、保存療法では急速に衰弱(せん妄、肺炎、床ずれ…)して、亡くなってしまいます。そのため、早期手術・早期離床を目指すようになりました。しかし、麻酔の影響は大きく、脳機能障害や、著しい低血圧などの危機的状況をもたらしかねません。どの様な麻酔をすべきか、しばしば悩みます。そんな時、“生きていれば、麻酔をかけられる”、“前向きに考えよう”という恩師の口癖が浮かんできます。骨折を契機に人生が終わってしまうのは口惜しい。回復への一助となりたい。知恵を絞って、今までの経験を生かして、麻酔方法を探っています。

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