くらし 永井豪さんと考える災害と防災のこと

防災意識向上のため、11月に新宿区総合防災訓練を開催します。そこで、区内に事務所を構え、能登半島地震で故郷・輪島市が被災された漫画家・永井豪さんにお話を伺いました。この機会に、一緒に防災について考えてみませんか。

○6歳で輪島から東京へ 事務所移転で新宿へ
・最初に新宿区との関わりや、まちの印象をお聞かせください
生まれは石川県輪島市で、小学1年生の1学期まで住んでいました。夏休みに入ると同時に東京に引っ越してきたのですが、引っ越しと長期休みが重なったせいで東京は学校に行かなくていいところだと思って喜んでいたら、9月にはやっぱり学校が始まり、がっかりしましたね(笑)。
新宿といえば、子どものころは、映画を見るためによく通っていました。高校生になると、お小遣いをやりくりしながら3本立ての劇場を探して3館ぐらいはしごしたりして、夏休みには40本近く見たこともありました。
漫画家になってから、事務所を移転するとなった時、たまたまいい物件に縁があって新宿に移ってきました。当時は徹夜で仕事をすることも多かったので、明け方近くになっても開いている店があったり、編集者との打ち合わせや飲みに行くにも便利だったり、何よりいつも賑わっているのがいい。編集者も喜んで来てくれますし(笑)。仕事にも娯楽にもいい、それが新宿というまちの印象ですね。

○耐火構造で免れたフィギュアと原画の数々
・令和6年、能登半島地震が起こったときのご心境は
能登半島地震では、故郷の輪島市も甚大な被害を受けました。地震後の火災で、朝市通りの近くに住んでいた親戚に連絡を取ろうとしたんですが、3日ぐらい経たってもつながらない。非常に心配でしたが、連絡を取り続け、4日目の夜にやっと無事だと分かった時はホッとしました。しかし家は全焼し、身一つで逃げたと聞いて、全力でサポートしなければと考えました。
・「永井豪記念館」の被災状況はどうだったのでしょうか
この記念館は、2009年に輪島市が朝市通りにオープンしてくれたのですが、やはり大きな被害を受けていました。展示していた原画等は建物ごと全て焼失してしまっただろうから、また描けばいいと思っていたら、なんと耐火構造の展示棟にあったグレートマジンガー像や原画など100点余りの作品は無事だったと連絡がありました。町中の建物がほとんど焼け落ちてしまった中、特別に設備を施していたあの1部屋だけが無事だったことに驚き、また防災の大切さを痛感しました。

○漫画やアニメで自分なりの災害支援を
・被災地に向けて行われてきた活動について教えてください
震災後はしばらく落ち着くまで東京でできる支援をしようと思い、記者会見をたくさんしたり、マスコミに働きかけて記事を書いてもらったりしながら、寄付の仕方を考えました。その一つが、ジュエリーデザイナーの梶光夫さんとコラボレーション制作した能登半島支援チャリティー作品「デビルマン宝飾輪島塗パネル」と「マジンガーZ宝飾輪島塗パネル」です。
また、私は日本漫画家協会の理事をしているのですが、そこで協会と協力して、色紙を集めてそれをオークションにかけようと思い立ちました。同じ理事の森川ジョージさんがとても頑張ってくれて、呼びかけに205人の漫画家が参加して、合計278枚の色紙が集まりました(本紙3面右上図)。私の知り合いではない方や、普段は色紙を描かない有名な方もたくさん参加してくれたこともあって、オークションでの収益金は1億2,300万円にもなりました。
・最後に、能登半島地震を経験しての防災や災害への考えをお聞かせください
私は漫画家なので、漫画やアニメを通して、皆さんを元気付けることでお役に立ち、復興への支援ができたらと考えます。皆さんも、できることから、自分なりに防災や災害に対しての行動を起こしていただくことが大事ではないでしょうか。

○永井 豪 ながい ごう
石ノ森章太郎のアシスタントを経て、1967年「目明しポリ吉」(「ぼくら」講談社)でデビュー。代表作に「マジンガーZ」「デビルマン」「ドロロンえん魔くん」「キューティーハニー」など多数。映画化、アニメ化された作品も多く、日本のみならず海外にも多くのファンを持つ。

・総合防災訓練(本紙3面)にぜひ参加を!

■被災地を訪ねて
「前を向く被災地の方々に元気をいただきました」
永井さんが震災後に初めて輪島を訪れることができたのが、今年6月末のことでした。「マジンガーZ」のアートプリント作品を輪島市に寄贈することも兼ねて訪問されたそうです。
現地で記者会見会場として用意されたのは、何もない場所。永井さんは、なぜここなのかと疑問に思ったそうですが、実は、そこは記念館があった場所だったのです。それを聞いた永井さんは、「言葉を失いました。何もない、知っている景色が一つもない、ここまで何もなくなってしまうんだと。そこに町があったと言われてもにわかには信じられませんでした」と話します。
その後、伝統の輪島朝市を守るために開催された出張朝市を訪れ、朝市の皆さんと写真を撮ったり、朝市のテントにサインをしたりして交流されたそうです。その時の様子を「震災の後には奥能登豪雨もあって、本当に大変な思いをされたはずです。でも、もうどん底まで行ったから後は昇るしかないという気持ちを、現地の皆さんから感じました。やっぱり未来に向かって生きていくしかないんですよね。その元気の源に漫画やアニメが役に立てばうれしいです」と語られました。

問合せ:区政情報課広報係
【電話】5273-4064