- 発行日 :
- 自治体名 : 東京都青梅市
- 広報紙名 : 広報おうめ 令和7年4月15日号
■岩蔵の御嶽神社
市文化財保護指導員 儘田菜つ美
岩蔵御嶽神社は、小曾木五丁目にあり、主祭神は天穂日命(あめのほひのみこと)で、景行天皇(けいこうてんのう)の皇子である日本武尊(やまとたけるのみこと)が東征の折に勧請したのが創建と伝えられています。相殿(あいどの)は蔵王権現と称し、かつては北方の山頂に、奥津宮(おくつのみや)として鎮座していましたが、山火事で焼失したため、安永5(1776)年に本社に合祀されました。そして明治維新の際、蔵王権現から御嶽神社に改称されました。本殿の厨子(ずし)の中には、御神体である千手観音菩薩坐像と蔵王権現立像が彫り出された二面の懸仏(かけぼとけ)が納められています。懸仏は、丸い鏡面に仏・菩薩(ぼさつ)・明王・神などの像を現し、古くは御正体(みしょうたい)と称されました。10世紀頃から行われていた銅鏡の製作が発展し、後に神仏習合の思想なども加わり、懸仏は江戸時代まで盛んに製作され、神社や寺院に奉納されました。岩蔵御嶽神社の懸仏は、『青梅市史』では鎌倉時代から室町時代の製作とされ、市の有形文化財に指定されています。
境内にある狛犬は、東京の根津で金物屋を起業し成功した岩蔵出身の塩野傳次郎により昭和9(1934)年に建納されました。塩野傅次郎は、昭和初期に市立第七小学校の二宮金次郎像も製作しています。老朽化した大正時代の鳥居は、氏子でもある地元の職人さんたちの協力により、昨年、約100年ぶりに再建されました。このように、岩蔵御嶽神社は地域の人々に親しまれ、大切に保存されています。
※「青梅市の文化遺産」の連載は今回で終了し、次回からは、市内の指定文化財について紹介する「青梅市の文化財探訪」の連載となります。
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