文化 青梅市の文化財探訪3

■「重要文化財 紫裾濃鎧」
市文化財保護指導員 荒井悦子

武蔵御嶽神社が所蔵している国宝赤糸威鎧(あかいとおどしのよろい)と並んで、紫裾濃鎧(むらさきすそごのよろい)は国の重要文化財に指定されています。弘安4(1281)年、蒙古が日本に二度目の侵攻を仕掛けた弘安の役の際、惟これやす康親王より蒙古撃退祈願のため奉納されたと伝えられる大鎧です。
裾濃(すそご)とは上部から淡く裾に下がるにつれ、濃い色に染色されたものです。しころ、大袖、胴から下に垂れた草摺(くさずり)という部分が、白、黄、淡紫、中濃紫と染められています。明治36(1903)年に行われた日本美術院の修復により、新たな糸が使われていますが、本来紫色の糸は紫草で染められていました。鎌倉時代中期の洗練された優雅な大鎧で、現存する紫裾濃鎧としては最も古く、この時代の様式判定の準拠となる代表的なものです。
繰締緒(くりしめのお)といわれる胴を締める紫裾濃鎧の組紐は、両面亀甲(りょうめんきっこう)模様の秀逸なものです。これは「御嶽組(みたけぐみ)」として知られ、赤糸威鎧のくさび模様の組紐より、さらに高度なものとなっています。徳川吉宗がこの両面亀甲組紐を模倣させますが、当時は復元できませんでした。昭和51(1976)年、上野の組紐職「道明」により数年がかりで試作が試みられ奉納されました。紫裾濃鎧と繰締緒は武蔵御嶽神社宝物殿に展示されています。

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