- 発行日 :
- 自治体名 : 神奈川県小田原市
- 広報紙名 : 広報小田原 令和7年9月号 第1277号
◆「モルディブの島々を訪ねて」
7月23日から27日までの5日間、インド洋に浮かぶ島国・モルディブ共和国を訪問しました。2014年、当時のヤーミン大統領来日時に、東京近郊で日本らしさを感じられる都市の訪問希望があり、外務省を通じて小田原訪問が企画されたことを契機に、10年来の交流を重ねてきました。昨年度末、姉妹都市提携の打診と独立60周年記念式典へのご招待を受け、今回訪問することとなったものです。
決して近くないモルディブの訪問を決めたのは、国土の80%が海抜1m未満、気候変動により水没の危機にあるモルディブの現状を知り、その不安や苦しみを分かち合う関係を築くことで、小田原での気候変動対策に我がこととして取り組む契機にしたいと考えたからでした。
実際、都市間交流を望んでいる赤道直下の孤島・フォームラク市の海岸に立てば、インド洋から打ち寄せる波で沿岸は洗掘され、ヤシの根はむき出しとなり、すっかり倒れてしまったものも。首都マレに隣接するビリンギリ島でも、古くからの護岸壁は崩れ、土のうやフレコンバッグで補強しています。首都マレでは、日本政府が以前大規模に行った消波ブロックの積み上げにより高波から守られているとの感謝を、多くの人たちから伺いました。
そうした深刻な状況を見聞きし心を痛める一方で、モルディブの人々の大らかさや優しさ、穏やかさに触れた交流でもありました。珊瑚礁(さんごしょう)に囲まれたリゾートアイランドではなく、緑に覆われモルディブで唯一淡水湖をもつフォームラク市では、イスマイル市長らと意見交換を行うとともに、島内各所を訪問。ゆったりとした時間が流れ、島の自然環境保全や漁業・農業に携わる人たち、環境や科学に関心を持つ高校生たち、島の人たちの素朴な暮らしぶりから「本当の豊かさ」や「人にとっての幸せ」といったものにつながる、私たち日本人が忘れかけている大切なものを感じました。
今回の訪問では、大統領との接見や外務大臣との懇談をはじめ、外務省、都市・地方自治・公共事業省、現地の日本国大使館、元駐日大使らともじっくり意見交換。いずれも、モルディブと小田原の今後の交流を歓迎し応援したいとのことでした。海を隔てた遠い間柄ながら、今回ぐっと深まったモルディブと小田原の絆を、双方の未来に、特に若い世代の学び合いに生かしていければと願っています。