健康 砺波総合病院から

■鍼灸によるケア
緩和ケア科
鍼灸師 武田 真輝

◆はじめに
市立砺波総合病院の緩和ケア科では、主にがんによっておこる痛みやだるさなどの様々なつらさを和らげて、最後まで自分らしく過ごせるよう、総合的に支援しています。
これまでは、緩和医療専門医と緩和ケア認定看護師が所属していましたが、令和6年4月から緩和ケア科の専従スタッフとして鍼灸師が加わりました。今回は新しく緩和ケア科に加わった鍼灸について、ご紹介させていただきます。

◆鍼灸ってなに?
「鍼灸(しんきゅう)」と聞いて、馴染みがない方もいらっしゃるのではないでしょうか。鍼灸とは、鍼はりによるケアとお灸きゅうによるケアを合わせたものです。患者さんの状態に合わせてどちらか片方を行う場合と、両方を組み合わせて行う場合があります。鍼というと一般的に「痛い」というイメージが強いと思いますが、当院で行っている鍼は、鍼を刺さずに体のツボに当てて刺激をする優しい方法です。そのため、痛みや出血が起こる心配がなく、安心してケアを受けていただくことができます。また、熱くないお灸を使用しているため、温かくて気持ちいいと感じるケアになります。

◆鍼灸の効果
日本や中国などでは古くから行われてきた鍼灸ですが、最近は多くの国で実施され、その効果に関する研究が行われています。例えば、手や足にあるツボに鍼やお灸をすると、頭や体の中で痛みを和らげる物質(内因性オピオイドなど)が出るため、痛みが軽減することが分かってきました。他にも筋肉の緊張を和らげる効果、身体や気持ちがリラックスする効果があることも分かってきました。

◆緩和ケアと鍼灸
がん患者さんに対する鍼灸を用いたケアは、一部の大学病院では行われていますが、日本ではまだまだ認知されていないケアの方法になります。一方、海外では日本よりも鍼灸が行われている国もあり、イギリスでは多くのホスピスで緩和ケアの方法のひとつとして取り入れられています。また、鍼灸を行うことで、がん患者さんのQOL(クオリティ・オブ・ライフ:「人生の質」、「生活の質」などと訳され、生きる上での満足度のようなもの)が向上したという結果がでています。

◆鍼灸によるケアを通して
緩和ケアを受け始めた患者さんの多くは、鍼灸によるケアの間、病気や症状に関する悩みを中心にお話されます。薬や鍼灸による緩和ケアを受けていただき、つらい症状が緩和された状態になると、趣味や生活、家族の話など、病気や症状以外の話題が増えてくることがよくあります。病気や症状以外のお話をされている患者さんを見ると、表情はとても穏やかで、その方らしさが垣間見える瞬間だと感じます。私たちは鍼灸によるケアを併用することで、一人でも多くの患者さんが、自分らしく過ごせるようなお手伝いをしたいと考えています。

◆おわりに
私たちが対象とするのは病気ではなく患者さんの身体全体であって、さらに言うとその人そのものです。緩和ケアと鍼灸が融合することで、より明確に患者さんの身体と暮らしをケアの対象として浮かび上がらせることができます。
それだけでなく、当科では患者さんの家族もまたケアの対象者として、日常的に関わるように努めています。困難な中でも患者さんと家族が癒やされ、生きる喜びを感じられるよう、スタッフが心を込めて診療にあたっています。

◆令和7年度砺波市職員採用試験
[職種]看護師・助産師、薬剤師、臨床検査技師、作業療法士、調理師
[締切]
第1回:4月30日
第2回:5月30日
第3回:6月30日
職種ごとに試験日と申込期間が異なります。
詳細は、病院HPを参照してください。

病院のHPもご覧ください。
問合せ:砺波総合病院
【電話】32-3320