- 発行日 :
- 自治体名 : 福井県鯖江市
- 広報紙名 : 広報さばえ 令和7年9月号 通常版
■第368回 文化財編(45) 秋陽の真宗王国に届く南無阿弥陀仏
「われ程名号(みょうごう)書きたる人は日本にあるまじきぞ」と1日に200~300幅もの名号を書いたという本願寺8世蓮如上人(れんにょしょうにん)。浄土真宗の祖親鸞聖人(しんらんしょうにん)の「限りない光で世を照らし、念仏者を救済する阿弥陀如来は本来、色も形もない存在であり、阿弥陀仏に帰依(きえ)するという言葉(名号)こそ本尊である」という教えを広め、無数の名号本尊を下付して爆発的に門徒を増やしました。
さて、照臨寺には蓮如上人が書いた短冊状の名号50点を貼り合わせて折本(おりほん)に仕立てた「紙本墨書(しほんぼくしょ)六字名号(南無阿弥陀仏)」と、筆跡から子の実如(じつにょ)上人筆と推定される「紙本墨書九字名号(南無不可思議光如来)」が伝来しています。寺伝では仰明寺(1684年に分かれて照臨寺が成立)が1464年に真言寺院から真宗に改宗した後、文明年間(1469-1486)に御染筆(ごせんぴつ)を賜ったと伝えており、伝来の九字名号がこれに当たると考えられます。
阿弥陀仏が御座(おわ)す極楽浄土の方角に太陽が沈む秋彼岸、首を垂らす稲穂の側では天上に咲くという曼殊沙華が静かに花開きます。蓮如上人が礎を築いた「真宗王国」では、日々の暮らしと秋の実りに感謝して、亡き人との思い出を語らう大切な営みが今も変わらず続いています。
(文化課 藤田彩)
◇平成27年度指定の市指定文化財(2)
紙本墨書九字名号(和田町)
紙本墨書六字名号(和田町)