- 発行日 :
- 自治体名 : 山梨県北杜市
- 広報紙名 : 広報ほくと 令和7年9月号
今月は辺見診療所からのお知らせです
■不眠症の考え方
北杜市辺見診療所 三井梓
なかなか寝つけず、夜中に何度も目を覚ます、もしくは朝早く目が覚め、再び眠りに戻ることが難しいことが不眠の特徴です。そして、不眠症状が慢性化するとしばしば、朝起きた際の、睡眠により疲れが取れた感覚が薄れ、活力や気分の低下、仕事の効率の低下、生活の質の低下など、さまざまな日中の困りごとが生じる様になります。
強いストレスを感じる出来事に遭遇すると、多くの人が数日から数週間続く一時的な不眠を経験しますが、一部の人では不眠が長期にわたり持続し、不眠が週3日以上、3カ月以上持続する場合、治療が必要な慢性不眠症の可能性があります。前述の不眠症状(夜間症状)に、日中症状が加わると、治療が必要な不眠症と判断されます。
不眠の慢性化には、不適切な睡眠習慣として、寝る前にリラックスしようとして、カフェイン(緑茶、紅茶、コーヒー)、ニコチン(タバコ)を摂取すると、これらの物質が持つ覚醒作用により、寝つきがかえって妨げられます。アルコールには寝つきを促す作用がありますが、夜中にアルコールが抜ける段階で覚醒を促し、中途覚醒を増加させます。次に、床上時間の不一致として、寝不足を取り戻そうとして、普段より長く寝床に居続けることは、一晩にとれる眠りの量や寝付けるタイミングは1人1人異なるので、眠りが浅くなり中途覚醒が生じやすくなります。また、普段より早く寝床に入っても寝つけず、イライラ・心配しながら床の中で過ごすことがさらに寝つきを悪化させます。また、日中の活動量が減少しますと、寝つきが悪くなり、眠りが浅くなります。起きている間に、できるだけたくさん体と頭を動かすほど、眠りの必要性が高まり、疲労回復や学習の定着に役立つ良質な睡眠が促されます。そして、睡眠状態の認識として不眠症では、実際の客観的な睡眠時間と、自覚的な睡眠時間が一致しないことがあり、自覚的睡眠時間を非常に短く感じることがあります。この場合は、睡眠時間をむしろ積極的に短くし睡眠を濃縮させることが、不眠の解消に役立つことがあります。
治療法は、まず不適切な睡眠習慣や対処法を見直すことから始まります。眠気がやってきたら寝床に入るようにして、床上時間と実質睡眠時間をできるだけ一致させることが大切です。また、眠りが不十分であっても、決まった時刻に起床することで、翌日は体が休もうとする力が高まり眠りが促されます。不眠が続いてしまったら、床上時間を普段よりむしろ短くすることで、眠りが「濃縮」され、寝つきや眠りの維持が容易になります。なお、睡眠薬を使用する薬物療法は、医療機関にご相談ください。