くらし INA輝き人ファイル No.60

■ステンレスから懐かしさや笑顔を届ける
小坂 洋一さん(83)

「何事にも感謝し、前向きに考える」ことが大切だと、ステンレス工芸作家の小坂さんは話します。
55歳まで家業でステンレス加工を行っていた小坂さん。平成20年に伊那中学校の同級生から「昭和32年卒業生で作品展をやるから」との誘いを受け、これまで培ったステンレスの加工技術を生かし作品を作り始めました。「この誘いがなければ、今みたいに作品を作っていなかった。同級生には感謝しかない」。
作品は一つ一つ手作業で曲げたり叩いたりして作るため時間がかかるうえ、体力も必要です。月4回福祉まちづくりセンターや水神町集会所で行われる「筋トレ教室」に参加することで、体力がつき、制作ができるといいます。
また、今年の4月に岩手県大槌町へ『津波の怖さを後世へ』という作品を寄贈しました。東日本大震災の津波で民宿の上に乗り上げた観光船「はまゆり」を再現していて、「皆さんに見てもらって、津波の怖さを知り、また津波が来た時にはみんなで助け合うことの大切さを伝える教訓となれば」と願いを込めました。作品は同町の赤浜分館に展示されています。
自身の体験や思い出を作品にすることが多い小坂さんは「ステンレスには冷たくて硬いイメージがあるが、そんなステンレスの作品で大勢の人たちが懐かしんで微笑んでくれることがうれしい」と話します。制作した作品を通じ、人と人のつながりが広がることがやりがいだという小坂さん。これからもつながりを大切に作品制作に取り組みます。

▽こさか・よういち(御園)
ステンレス工芸作家。伊那図書館などで展覧会を開催しているほか、国立新美術館(東京都)や松本市美術館(松本市)などで開催される美術展に多数出展。受賞経験も。人を喜ばせることが好きで、ステンレス工芸のほかにも、福祉施設などでマジックや演奏の披露を行う。写真の作品は『一人三役俺の下手な芸』。一人で3つの楽器の演奏を行う自分をモチーフにした。