くらし 声をカタチに 声を未来に 藤井浩人市長コラム

■「夏といえば」
夏といえば、私には一つ、鮮明に思い出す景色があります。それは、父と弟と一緒に登った山の風景です。朝早くに出発し、まだ眠たそうな弟と手をつなぎ、父が背負うリュックを追いかけながら進んだ山道。崖を横目に、「吸い込まれてしまうのでは」とおびえたこともありました。街の喧(けん)騒とはまるで違う、静けさと澄んだ空気。鳥の声や風の音だけが聞こえる登山道を一歩ずつ進んでいくと、足元には一面の雲海が広がっていました。頂上で食べたカップ麺の味は、今でも忘れられません。子どもながらに「この世界は広いんだ」と思わせてくれた、あの特別な時間。当時は、山登りの醍醐味(だいごみ)を理解するには至らず「また行きたい」と思った記憶はありませんが、今となっては、夏を思い出す大切な体験です。
思えば、美濃加茂市やその周辺には、そんな非日常がすぐそばにあります。里山、木曽川、公園、キャンプ場。遠くに出かけなくても、心を解き放てる場所がたくさんあります。自然の豊かさを身近に感じられることは、私たちのまちの誇りです。
この夏、家族や友人と、「あのときの思い出」になるような一日を計画してみませんか。どこか特別な場所に行くのもすてきですが、身近な山や川が、きっと忘れられない思い出をつくってくれるはずです。夏の一日、非日常への小さな冒険を。美濃加茂市には、その入り口がたくさんあります。