くらし 市長メッセージ特別企画(1)
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- 発行日 :
- 自治体名 : 愛知県一宮市
- 広報紙名 : 広報一宮 2025年7月号
■「デジタルで進める一宮市の健康づくり」
地域DX特別対談
一宮市長 中野正康×i-スマ会長 名古屋大学医学部附属病院 病院教授 白鳥義宗さん
《白鳥義宗さん》
しらとりよしむね/一宮スマートシティ推進協議会(i-スマ)会長、名古屋大学医学部附属病院病院教授・メディカルITセンター長を務める
▽デジタルで、健康を意識する
[中野]一宮市は昨年9月から、健康支援アプリ「kencom(ケンコム)」を導入しました。(株)ディー・エヌ・エー(DeNA)のヘルスケア部門(※1)が開発したアプリで、他自治体で先行利用されていたものを一宮市の要望も踏まえて機能の追加などがされています。毎日の歩数や体重などを記録できるだけでなく、マイナポータルと連携することで健診結果も記録できます。さらに、マイナポータルでは最大5年分しか保存できない健診結果を、「kencom」では永続的に残しておくことができます。市民一人一人が生涯にわたって、自分の健康を意識するような文化を醸成できたら、と期待しています。
[白鳥]そうですね。自分の体重や血圧をはじめ、健診結果を意識していない方が多いです。私は内科医として、患者さんに「自分の状況を知ってください」と伝えています。まずは自分の健康状態に興味を持つことが重要なので、スマホで過去の健診結果をすぐに確認・比較できることは非常に素晴らしいと思います。
▽母子健康手帳も、デジタルで便利に
[中野]一宮市は、「kencom」と母子健康手帳アプリ「138(いちのみや)おやこ手帳アプリ」を都市OS(※2)で連携させる取り組みを進めています。二つのアプリをつなげることで、子どもの時の予防接種の記録など、生涯の健康に関わるデータをアプリで確認できるようになります。大人になったときに役に立つ場面が多いと考えていますが、白鳥会長のお言葉もいただければと思います。
[白鳥]日本には母子健康手帳に予防接種を記録して保存するという、世界的に見ても素晴らしい取り組みがありますよね。ただ、紙の手帳だとなくしてしまうこともあるので、デジタルで保存すれば大人になったときにも有効活用できると思います。
例えば、海外へ留学するときなどに予防接種の記録を求められることがありますが、紙の手帳をわざわざ取り寄せることなく、アプリで確認できることは素晴らしいと思います。予防接種の履歴はとても大事ですが、何十年も経過すると正確なことが分からなくなることもあるので、デジタルで記録を残しておけるというのは、とても意味があると思います。
▽日本ならではの手厚いサポート
[中野]日本人は健康で長生きというだけではなく、乳幼児の死亡率が低いですよね。アジアでは日本の母子保健制度を教えてほしいという要望が多く、母子健康手帳にも注目が集まっているそうです。日本は高齢化などの課題先進国だといわれており、それに打ち勝つために生み出してきたプロダクトやサービスなどは、世界に誇れるものだと思いますが、いかがでしょうか。
[白鳥]日本は両親や、それを支える保健所が非常に頑張っていますよね。乳幼児の死亡率が低いのは、子のことを思う親や保健所、医療の成果で、世界に誇れるものだと思います。保健師さんや助産師さんも非常に丁寧で、出産前からいろいろなことを教えてもらえるんです。出産後も子どもが熱を出したときなど、海外と違ってきめ細かい対応をしてくれますしね。
[中野]なるほど。母子健康手帳だけでなく、保健所や保健師さんなど、行政の手厚いサポートも重要なわけですね。
▽治療ではなく、健康にお金を使う
[白鳥]ただ、日本も今のままだと医療費が高くなり過ぎて、医療制度が維持できなくなります。改善するためにも、「kencom」のようなデジタルツールを活用し、治療のためでなく健康のためにお金を使ってもらえるようになるのがいいのではと思います。
[中野]そうですよね。日本が世界に誇る皆保険制度や、保険証一つで医療機関を自由に選択できるといった良いところを、持続可能性のあるものにしていくために、市民一人一人の健康を、我々地方自治体が下支えできるよう頑張っていきます。
[白鳥]ぜひ、よろしくお願いします。
(※1)…(株)ディー・エヌ・エー(DeNA)のグループでヘルスケア事業を展開するDeSCヘルスケア(株)が開発・運営
(※2)…都市OS…自治体や企業が保有するさまざまな分野のデータを横断的に連携する基盤
※対談の拡大版はウェブサイトで!
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