- 発行日 :
- 自治体名 : 愛知県半田市
- 広報紙名 : はんだ市報 2025年(令和7年)1月号(NO.1576)
■第76回 南吉からの年賀状
近年、SNSなどを使った新年の挨拶が増えていますが、みなさんは年賀状を出しましたか?南吉記念館では、南吉が書いた年賀状を4通所蔵しています。年賀郵便の特別取扱制度(年末の一定期間に受け付けると、元日頃に配達される)の始まりは明治期ですが、年賀切手の発売は昭和11年の年賀状用からで、記念館の資料も昭和11年だけ年賀切手が使用されています。しかし日中戦争の戦局悪化などを要因に、昭和13年頃から年賀郵便は減少し、昭和15年11月に特別取扱は停止しました。
(1)歌見誠一(うたみせいいち)宛(友人)S10.1.2消印「春を祭る新美南吉」(※)
(2)巽聖歌(たつみせいか)宛(北原白秋門下の先輩)S11.1.1消印「謹賀新年/(略)」
(3)河合弘(かわいひろし)宛(友人)S11.1.1消印「謹賀新年/(略)」
(4)鈴木知都子(すずきちづこ)宛(女学校の教え子)S15.1.7消印「明けまして/おめでたう/(略)」
(2)~(3)は、本名の「新美正八」ですが、(1)だけはペンネーム「新美南吉」で送っています。挨拶もこれだけお馴染みの定型文ではなく、余白を贅沢にとり、短い言葉の中に、めでたく喜ばしい気持ちが表わされています。
東京外国語学校の学生時代に同じ詩人仲間に送った、南吉らしい年賀状です。
参考文献:日本郵便株式会社監修(平成31年)『年賀状のおはなし』ゴマブックス
※「春」の表現は、正月を「新春」と言うように、旧正月が春の始まりだった名残として使用されたものと思われます。