- 発行日 :
- 自治体名 : 愛知県津島市
- 広報紙名 : 市政のひろば つしま 令和7年6月号
■熱中症について
津島市民病院 内科医長
加藤将宏(かとうまさひろ)
◇はじめに
近年では毎年の様に記録的な猛暑となっており、ニュースで取り沙汰されています。自分のこどものころは夏に30度を超えることはそこまで多くなかったように思いますが、最近では40度近い気温を記録することも少なくありません。実際のところ、100年前と比べると日本の平均気温は1.5℃程度上昇しており、救急搬送される患者の数も急増しています。
今年も既に酷暑を感じさせる気温となっておりますが、熱中症対策についてお話させていただきます。
◇なぜ熱中症になるのか
熱中症とは、高温多湿な環境で体温調節機能が働かなくなることで発症する障害です。体温よりも気温が低ければ、空気中に熱を放散して体温を低くできますが、気温があまりに高いと難しくなります。また、見落とされがちですが、多湿環境では空気中の湿度が高く、発汗により体温を下げることも難しくなるため、熱中症予防には湿度の高い環境を避けることも重要です。
年齢が上がるにつれて気温の変化を感じ取りづらくなってきます。水分摂取の遅れ、エアコンなどでの室温の調整が遅れることにより室内での高齢者の熱中症が増えており、室外での熱中症に比べて重症化しやすいともいわれています。
◇症状
熱中症の症状にはめまい、顔のほてり、筋肉痛、筋肉のけいれんなど、様々なものがありますが、頭痛、嘔吐、意識障害、判断力の低下など、中枢神経にかかわる症状が出たときは特に重症なので注意が必要です。判断力が低下してしまうと対処も遅れてしまうため、普段からの早め、こまめな対策が重要となってきます。
◇予防
室内ではエアコン、扇風機等で温度を調節、遮光カーテン、すだれを利用しましょう。前述したとおり湿度も重要な要素なので、除湿器なども併用すると効果的です。屋外では天気のよい日は、なるべく日中の外出を控えること。日傘や帽子の着用、冷暗所でこまめな休憩をとりましょう。また、乳幼児や高齢者は脱水になりやすく、水分摂取が遅れがちなので、こまめに水分を促すことも重要です。
熱中症が疑われる場合は、応急処置として、涼しい場所で横になり、水分や塩分を補給しましょう。意識障害がある場合は無理せず、医療機関を受診しましょう。
普段からの予防が重要なので酷暑に向けて生活環境を整えるところから始めていきましょう。
◇病院での治療
病院で受診した場合はどういった治療を行っていくかを説明します。バイタルや重症度にもよりますが、膀胱、直腸などに特殊なデバイスを使用して深部体温という体の奥の体温を測定します。体表は外気温の影響を受けやすいため、腋窩(えきか)などでの体温は室内に入るとすぐに低下してしまいます。深部体温は重症度に相関し、継続的にモニタリングできるためです。並行して深部体温を速やかに下げ、脱水を補正するため補液、腋窩、鼠経(そけい)などの冷却、クーリングなどをおこなっていきます。
重症化すると肝臓や腎臓の機能、意識障害、血液がかたまりやすくなったりするなどして後遺症を残すこともあります。
◇さいごに
電気代の高騰や記録的な最高気温の上昇により、対策が難しくなってきています。繰り返しになりますが、熱中症の予防には蒸し暑い環境を避けることと、水分がたりないと感じる前からこまめな水分補給が重要となります。今回のお話が皆様の健康の助けになれば幸いです。