くらし 私のカルテ No449

■あなたは大丈夫?頚動脈狭窄症(けいどうみゃくきょうさくしょう)について
津島市民病院 脳神経外科医師
井面利昂(いのもとしあき)

◇はじめに
「脳梗塞」、一度は耳にしたことがあると思います。脳梗塞とは脳を栄養する血管が何らかの原因で詰まってしまい、脳が酸素不足で壊死してしまう怖い病気です。前ぶれもなく突然症状が出現し、寝たきりになってしまうこともあります。そんな脳梗塞を引き起こす原因の1つに頸動脈狭窄症があります。

◇頚動脈狭窄症とは
私たちの首には、脳に血液を送るための「頚動脈」という大事な血管があります。年齢を重ねると頚動脈の内側にコレステロールなどの汚れ(プラーク)がたまりやすくなります。プラークによって血管が狭くなってしまった状態を「頚動脈狭窄症」といいます。

◇なぜ脳梗塞になるの?
狭窄が軽いうちはほとんど症状は出ません。しかし、狭窄が進むと血管の内側に溜まったプラークが剥がれて飛んでいき、脳の血管を詰まらせてしまいます。これが脳梗塞を起こす機序です。脳梗塞では手足の麻痺や言葉のもつれ、目の見えにくさなど多彩な症状が出ます。症状が数分で良くなることもあるので要注意です。一度脳梗塞になると後遺症を残すことも珍しくないため、そうなる前の早期発見や予防治療がとても大切になります。

◇こんな方は要注意
頚動脈狭窄症は主に中高年以上から見られます。高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病がある方や喫煙歴のある方は特に注意が必要です。また、心筋梗塞や狭心症などの心臓の病気をした方は頚動脈狭窄を含め他の血管にも異常がある可能性が高いです。

◇どうやって見つけるの?
頚動脈狭窄症はエコー検査やMRI検査で体に負担をかけず、簡便に見つけることができます。一度も検査したことがない方はやってみてもよいかもしれません。気になった方はかかりつけの先生や私たちに相談してみてください。

◇治療法は?
治療方法は、狭窄の程度や症状の有無によって変わります。狭窄が軽度の場合は生活習慣の改善や内服薬で経過をみます。狭窄が中等度~重度の場合や、脳梗塞を繰り返す場合は手術を行います。手術には以下の2通りがあります。
頚動脈内膜剥離術(CEA):首を切開し、動脈の内側にたまったプラークを取り除きます。
頚動脈ステント留置術(CAS):足や手の血管からカテーテルと呼ばれる細い管を通して、狭くなった部分を金属の筒(ステント)で広げます。
いずれも利点・欠点があるため患者さんの状態や希望に応じて、最適な治療法を選択します。当院ではどちらもできる体制と設備を整えています。

◇予防方法
手術以外で頚動脈の狭窄を改善することは残念ながらできませんが、以下の方法で狭窄を悪化させないようにすることはできます。
・塩分や脂質を抑えた食事
・規則正しい生活や定期的な運動
・禁煙
・血圧、血糖値、コレステロールの管理
これらは様々な病気の予防にもつながります。何か気になることがあればいつでも気軽に私たち脳神経外科に相談してください。