健康 奥三河ミライバレープロジェクト vol.26

今回は関節鏡のお話です。関節鏡とは、関節の手術で関節内に挿入する細長いカメラのことです。
関節鏡は、今から100年以上前の1918年に、東京大学整形外科の高木賢次(たかぎけんじ)教授らが膀胱鏡を使って膝関節を観察したのが世界初の関節鏡と考えられています。その後も改良を繰り返し、高木教授の指導を受けた渡辺正毅(わたなべまさき)教授らが、1959年に世界初の実用的な関節鏡を開発し、世界中に広がりました。
現在では膝以外にも肩、手、股、足、そして指の関節の手術や、外傷、変形性関節症などのさまざまな疾患の手術にも関節鏡が使われています。使用するカメラやモニターは、高解像度4K画質が一般的となりました。
私たちは名古屋大学で手外科を専門にしており、手や肘関節の関節鏡手術を行うことが多くあります。直径1.9mm~2.7mmのサイズの関節鏡を使用し、カメラで関節内を見ながら直径2mm~3mm程度の器具を用いて関節内の処置をします。切開手術に比べて傷が小さいため、日常生活への復帰が早いのが利点ですが、狭い空間に対して道具を駆使して手術を行うため、合併症には注意が必要です。そのため、術前に撮影したCTやMRI検査の画像を関節鏡のモニターに重ねて表示する技術を開発し、安全な関節鏡手術が行えるように工夫しています。これは私たちが世界で初めて開発した技術です。
技術の進歩が患者の負担軽減に役立っています。

文責:名古屋大学 大学院医学系研究科 人間拡張・手の外科学 教授 山本 美知郎(やまもと みちろう)

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