くらし 水の出会いを越え、木を育む(3)

■「山と暮らす私たち」ー「王滝村・木曽町で働く人々」

◆木の温もりを日常に取り入れてほしい
≪木曽の木材を全国へ届ける≫
(株)木曽谷Kousaku(きそだにこうさく).は、木曽町の木材加工業者の一つ。従業員の多くは地元の学校を出て、全国に木曽の木材を使った製品を届けています。
同社は、ブランドである木曽ヒノキを活用した特注家具などの「ものづくり」に加えて、こどもの木育環境づくりの「ことづくり」、オフィス空間などの「まづくり」を行い、まちの活性化に貢献しています。

○INTERVIEW
当社は、オリジナルの木曽ヒノキ合板と最新の木工技術を導入したシステム的な家具作りをしているので、若手でも安全に即戦力として働けます。特注家具の製造は難しいこともありますが、試行錯誤しながらも完成したときは達成感があり、やりがいにもつながります。木曽ヒノキは、寒い地域でゆっくりと成長するので木目が細かく、強度があります。木曽町は森林資源が豊富にあり、優れた木工技術もあることから、今後の可能性を秘めています。ぜひ日常に木を取り入れてほしいです。
(株)木曽谷Kousaku. 小坂正海さん

◆こどもたちに山に関心を持ってほしい
≪国有林を管理し、山を守る≫
木曽町の有形文化財に指定されている木曽地域最大の洋風建築物「御料館」。昭和2年に建築された旧帝室林野局木曽支局の庁舎で、平成22年に木曽町が取得し、保存・復元工事が実施され、平成26年から一般公開されています。
同館で働く古幡和久さんは、かつて国有林を整備・保全する部署で働いていました。

○INTERVIEW
木曽で生まれて、木曽で育ち、木曽の学校を出て、就職先を探していたときに国家公務員の林業職に合格しました。林業は自然が相手になるので、型にはまらず面白い仕事であり、自然を守る大切な仕事です。深刻な林業の担い手不足が叫ばれていますが、今を生きる若者世代へと林業を継承していきたいです。現在は御料館で、林業の歴史について話しています。標本などを見て、昆虫や動物に興味を持ってもらい、山への関心を高めてもらえたらうれしいです。
御料館 古幡和久さん

◆性別なんて関係なくかっこよく働きたい
≪バイオマスで、地域を活性化≫
木曽町は、再生可能エネルギーの積極的な導入などにより、地球温暖化対策につなげる取り組みを進めています。潤沢な森林資源がある一方、間伐などで生まれた、建築用材として使えない原木が林地に残されている課題がありました。その木材をウッドチップやまきなどに加工し、燃料として利用するモデル事業を平成30年から開始しています。

○INTERVIEW
生産したウッドチップは、木曽町温水プールや木曽おもちゃ美術館などのボイラーの燃料として活用されています。将来的には一般家庭の暖房などにも導入するなど、活用場所が増えたらうれしいです。そうすることで雇用の創出にもつながると思います。今、林業の人手不足は深刻です。「林業仕事=男仕事」の考えが強いかもしれないですが、これからは性別関係なく「私は林業がしたい」「この仕事してみたい」と思えるような働ける環境をアピールしていきたいです。
木曽町木質バイオマス事業協同組合
佐藤佳織さん

◆木曽のおいしい水 みんなで楽しみたい
≪水が伝える森の重要性≫
長野県上松(あげまつ)町出身の創業者が、上京した時に地元の水のおいしさを思い出し、ふるさとの木曽の御嶽山(おんたけさん)の自然や水を多くの人に届けたいと、40年前に水をテーマとした事業を立ち上げました。
木曽の水をブランド化し、全国へのPRを進め、地元の雇用にも結び付いた取り組みとして成長を遂げています。

○INTERVIEW
木曽の水は、自然豊かな環境で、古くから体積している岩盤を通った湧き水なので、ミネラルがバランス良く溶け込んでいます。森がしっかりと循環していれば、降った水が川に流れ、その養分が川を豊かにして、生き物がすめる環境をつくり、最終的に海が美しくなります。森をきれいな環境で保つという小さな積み重ねが、人の命を守ることにつながります。森への投資が、水の豊かさを保つためにも必要であると思います。
(株)21インコーポレーション
代表取締役会長 砂山純子さん