スポーツ 夢キラリ人

■野球人生のモラトリアムで
山田頼旺(らいおう)さん

「大学でもプロでも第一線で輝き続ける選手になります」と宣言し、カメラに向かって愛用の木製バットを構える山田頼旺さん(18歳・共和町・中京大中京高校卒)。走攻守を備えたバランスの良さと快音を響かせる長打が魅力で、高校通算20本塁打を記録するなど、今後の活躍を期待されている注目選手。2024年夏、激戦区・愛知で優勝を飾り、夏の甲子園出場を果たしました。金属製が主流の高校野球で、自身のスイングに合う木製をあえて選んで出場したこだわりから、野球への真面目な姿勢が伝わります。
山田さんは小学3年生で野球を始めて以来、野球一筋の人生を歩んできました。中でも激動だったと語る高校時代を「なかなかベンチ入りできず焦った1年生。あと一歩で甲子園に届かなかった2年生。あと一点、あと一勝と手を伸ばした最後の夏。悔しさをばねに客観視する冷静さと不屈の精神を手に入れました」と振り返ります。今もなお、野球への情熱は変わりません。この春から法政大学に進学し、東京六大学野球の舞台で新たな挑戦を始める山田さん。2月には早くも大学の寮に入り、野球部の練習に合流しています。「同学年のレベルの高さを肌で感じ、入学前からレギュラー争いを意識しています。自分に足りない部分とチームに必要な力を俯瞰(ふかん)して、即戦力で活躍できる選手になりたい」と真剣なまなざしで語ります。
取材当日、山田さんは高校の卒業式に出席するため、東京から一時帰省していました。初めての寮生活で、これまでの周囲のサポートや応援のありがたみを実感したそう。「夜遅くに帰って、泥だらけにしたユニホームを毎日きれいに洗濯してくれたこと。朝4時に起きて、朝食・昼食・補食分の弁当を作って、欠かさず持たせてくれたこと」。現役時代、毎日が忙しくて気付けなかった当たり前は、野球に専念できるよう家族が用意してくれたものでした。親元を離れて気付いた愛情あふれる思い出を指を折って数えながら「これからは頻繫に帰れなくなるので、帰省の間にできる限り感謝を伝えたいです」と話します。そして、小学生の頃から山田さんの活躍を見守ってくれていた祖父母に「これからも自分の一番のファンでいてほしい。プロのユニホーム姿を楽しみにしていて」とメッセージ。遠くの地でも心の支えとなっていた地元からの温かい応援に対し、「感謝を示すためにも活躍して、大府に名を轟(とどろ)かせたい」と拳を握ります。
山田さんは、家族やかつての野球仲間と過ごす帰省期間を大切にかみしめていました。高校野球から大学野球へと舞台転換をするはざまで得た気付きは、山田さんをさらなる成長に導くでしょう。