くらし 夢キラリ人

■文字が紡ぐ、仲間との縁
大府創作童話の会 井口元美さん

和歌山市が主催した「第2回有吉佐和子文学賞」で、佳作を受賞した井口元美さん。1512点のエッセーから選ばれ、6月には同市で表彰式が開催されました。
井口さんの作品『ほうれん草のゆで汁』は、自身のこどもの頃の、しもやけにまつわる母とのエピソード。方言で語られる会話、その飾り気の無さがリアルな家族の空気を描き出し、読み手にも母親への懐かしさとぬくもりを感じさせます。井口さんにとって初のエッセー作品とのことですが、こどもの頃の母とのやりとりは印象深く、記憶のまま自然に筆が進んだと話します。
井口さんの趣味は読書。子育て中もこどもたちと共に読書を楽しみ、国内外・ジャンルを問わず、ひと月に10冊程度は読み続けてきたとのこと。腰を据えて書くようになったのは、子育てなどを経たここ数年だと話します。
ところが書き始めてすぐ、FM大阪のラジオ番組「湊(みなと)かなえの『ことば結び』」の、原稿用紙3枚で書く小説の投稿企画で、優秀賞に選ばれます。書く楽しさに読まれる喜びが加わったと話す井口さん。以前から興味のあった「大府創作童話の会」に入会し、児童文学の創作に取り組みます。入会して2年、同人誌『花さかばあさん』の刊行に向け、今は学びの真っ最中。こどもを対象にした作品ならではの表現や技術に、楽しさと奥深さを痛感しているとのこと。仲間同士で切磋琢磨(せっさたくま)を続ける同会を「児童文学作家の先生の指導の下、42号発刊を続けている素晴らしい会」と、会員の手で大切に温められてきた場所だと話します。今回受賞したエッセーも、会の皆さんに背中を押されて応募したとのことです。 作品のヒントは自身の生活の中から生まれることが多く、「映画を見れば構成が気になり、旅行に行っても思いついたことはメモを取るなど、作品のために、見るもの聞くもの全てにアンテナを張り巡らせています」と朗らかに笑います。
今後は詩にも挑戦してみたい、自分が納得でき、読者に満足してもらえるような作品を書きたいと、目を輝かす井口さん。読書を通して蓄積された多くの言葉が、次のページへの扉を開きます。

井口さんの受賞作品『花さかばあさん第42号』は、アローブ図書館・公民館などでも読むことができます。