文化 〔連載コーナー〕歴史探訪クラブ其の247

■ただいま修理中「渡辺崋山像」
田原市博物館が所蔵する重要文化財「渡辺崋山像」はまもなく修理作業が完了し、博物館に帰ってきます。今回は文化財の修理作業がどのように行われているのかをご紹介します。
話は一昨年前まで遡ります。特別展「ドナルド・キーンと渡辺崋山」での展示を令和5年11月5日に終え、「渡辺崋山像」は、かつて国宝の渡辺崋山筆「鷹見泉石像(たかみせんせきぞう)」(東京国立博物館蔵)や重要文化財の椿椿山(つばきちんざん)筆「高野長英(たかのちょうえい)像」(高野長英記念館蔵)を修理したことがある東京の修理工房へと運ばれました。国宝や重要文化財は、文化庁の指導監督のもと、確かな技術と知識を持った専門の修理技術者が修理することを推奨されているからです。
修理工房では、修理前の記録、ホコリなどの汚れやゴミの除去、絵具の剥落(はくらく)止め、掛軸に仕立てる表装(ひょうそう)の新調など、さまざまな工程を経て修理を行っています。特に重要な工程は、本市、愛知県、文化庁、修理工房の4者が集まって会議を開き、本市がその工程の方針を決めています。なおこの修理では、現状維持の状態で後世に伝えることを原則とし、文化財の価値を損なわないよう、色を塗り直す修復作業は行いません。
現在は汚れやゴミが除去され、より鮮明に崋山の姿が見られる状態になりました。修理は3月に完了し、田原市へ帰ってくる予定です。お披露目を楽しみにしてください。
(学芸員 三宅良宜)

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